ちゃらっちゃー、ちゃちゃっ!
人造人間さおりん
セイトカイ地下秘密基地。火災は続き、警報が鳴りつづけている。 祐介とるりるり登場。るりるりは変身しているので、Aパートでの髪の毛や服のこげは見られない。二人は毒電波砲がすえつけられている地下ドックに入ってくる。
- 祐介
- これが毒電波砲か、、
- るりるり
- そう。長瀬ちゃんが作った毒電波銃を巨大化したもの。これを使えば、世界は長瀬ちゃんの思いのまま。
- 祐介
- フッ(と冷たい笑みを見せる)。思いのまま、か。
世界はいつも俺達に冷たかった。誰一人として賞賛してくれるものなど無く、、- るりるり
- 長瀬ちゃん、、、
- 祐介
- まず、俺達を受け入れなかった連中をこの世から消してやる。そして、俺達を引き裂き、俺達から時間を奪った連中も。
この地上を汚している愚か者どももだ!すべて浄化して、世界を一から作り直そう。俺とお前とで(るりるりを後ろから抱きしめる)。- るりるり
- 長瀬ちゃんがそう望むなら、、、
- 祐介
- 俺達は新しい世界のアダムとイブになるんだ。
祐介、後ろからるりるりを抱きすくめたまま口付けをする。甘い声を出するりるり。が、祐介はるりるりに息を付かせるまもなくキスの嵐を降らせる。
- プロフェッサーツキシマ(声だけ)
- (怒りを押さえた低い声で)あいもかわらぬ勝手な物言いだな、長瀬源二郎!
はっと驚き、身を寄せる祐介とるりるり。プロフェッサーツキシマは毒電波砲の発射口に仁王立ちして、祐介とるりるりを憤怒の形相で睨み付けている。
- 祐介
- (悠然と。プロフェッサーツキシマを見下すような表情)あんたか、月島。久しぶりだな。また実の妹を殺しに来たのかい?
- プロフェッサーツキシマ
- (激昂)なれなれしく月島などと呼ぶな!(急に怒りが静まり、ぼそぼそと聞き取れぬ声で。しかし、威圧感はひしひしと伝わる)哀れな研究者月島拓也はあの時に死んだのだ。今ここにいるのは、世界の征服者、プロフェッサーツキシマなのだ!
- 祐介
- ふん、プロフェッサーツキシマだと?
わらわら、とアンドロイドウーマン達がわいて出てくる。ぐるり、とアンドロイドウーマンたちに取り囲まれる祐介とるりるりだが、おびえる様子も見せず平然としている。
- 祐介
- セイトカイだか知らないが、こんなおもちゃを作って喜んでいるのかい、月島?
- プロフェッサーツキシマ
- おもちゃだと?
- 祐介
- (まわりをぐるり、と見渡す)どれもこれも、俺が遊び半分で設計した毒電波収集用の低脳ロボットどもだ。この程度のロボットを作り上げるのに、こんなに時間を掛けているようでは、セイトカイとやらの実力も知れようというものだ。
- プロフェッサーツキシマ
- (怒髪天を突く形相で)こしゃくな物言いを!かかれい!
プロフェッサーツキシマ、毒電波笛を吹いてアンドロイドウーマンたちに号令を掛ける。祐介たちに襲い掛かるアンドロイドウーマンたち。が、突如苦しみ出す。
- プロフェッサーツキシマ
- ど、どうしたというのだ!
アンドロイドウーマンたち、股間を切なそうに押さえる。たまらず自慰を始めるアンドロイドウーマンもいる。
もだえるアンドロイドウーマンたちに冷たい見下した視線をなげる祐介。
- 祐介
- 毒電波、それは人間のエネルギーの根元。リビドーと云い換えても良い。
リビドーが最高に高まる思春期の少年どもから毒電波を抽出するために設計したのが、こいつらアンドロイドだ。
妄想豊かな少年どもに毒電波を照射して誘惑し興奮させ、自らの性的レベルも上昇させることで相手のリビドーを最高潮に高める。それがふきふき回路、リビドー誘起装置だ。もだえるアンドロイドウーマンの股間を踏みしだく祐介。異常興奮状態にあったアンドロイドウーマン、たまらず失神してしまう。
- 祐介
- しかし、これがふきふき回路の弱点だ。相手を興奮させるだけでなく自らも興奮状態に落ちてしまい制御が不可能になってしまう。
祐介の高笑いが響く中、狂乱は続く。
巨乳のアンドロイドウーマン、背の低いスレンダーなアンドロイドウーマンを襲う。パンティを引き降ろすや否や、自分の性器をあてがい、こすり付ける。獣のような声をあげよがる巨乳のアンドロイドウーマン。
見回すと一面狂宴。あちらこちらで絶頂に達するアンドロイドウーマンたち。絶頂に達すると、ショートして煙を上げばたばたと倒れる。
怒りにぶるぶると震えながら、打つ手無く屈辱に耐えるプロフェッサーツキシマ。
- 祐介
- 見ろ、このありさまを。こんな淫乱ロボットどもを集めて新世界を建設しようなどと云うのか、ツキシマ?(と、あざけりの笑い)
- プロフェッサーツキシマ
- やはり、やはり貴様が長瀬源二郎だったのか…もっと早くに気付いておれば、、、、
貴様の目覚めぬうちに長瀬祐介を殺しておくのであったわ!青筋を立てて怒るプロフェッサーツキシマのアップにてこのシーン終わり。
「場面転換」
長瀬博士を見守っている沙織。場面はAパートと同じ。
- 沙織
- 何ですって!
- 長瀬博士
- 祐介は、、、祐介は源二郎のクローンなのだ。
おのれがツキシマに殺された場合の事を考え、自分のクローンを用意していたのだ。さらに、自分の記憶・人格・知識をすべてそのクローンの中に注入し、源二郎が死んでも第二の源二郎が毒電波を操り、この世界を手に入れるために。- 沙織
- (混乱)で、でも祐クンは普通の高校生だったわ!
- 長瀬博士
- それは、わしがあの赤ん坊が普通の人間となるように、祐介という人格を与えたからだ。毒電波によって歪み狂った源二郎の人格が二度とこの世界に現れぬように、源二郎にありきたりの普通の人生を、第二の人生を歩んでもらうために。
- 沙織
- そんな、、、それじゃぁ、祐クンは本当の祐クンじゃないの?作り物なの?本当の祐クンはあの冷たい目をした祐クンだっていうの?
ねえ、博士!教えて!沙織、長瀬博士の肩を激しくゆする。博士、急に動かされ苦痛の声を上げ、はっとした沙織は博士の肩から手を離す。
- 沙織
- ご、ごめんなさい。つい、、、
(はらり、と涙をこぼす)あたし、何を信じたら良いの、、、- 長瀬博士
- (沙織の手を取る)君は知っているはずだ。君の知っている祐介は作り物などではない。まして偽者などでもない。
- 沙織
- でも、祐クンは博士が作ったって、、
- 長瀬博士
- 作られた心であろうとも、その心を取り囲む世界と人々によって培われるもの。君の知っている祐介は紛れも無く長瀬祐介なのだよ。
ロボットだろうと、人間だろうと、ココロに違いなどあるはずが無い。そうだろう、沙織くん!- 沙織
- 博士、、、
- 長瀬博士
- (沙織の手を握り締める)沙織くん、頼む。祐介を過去の亡霊から救ってやってくれ。
源二郎はもう死んでいるのだ。一人の少年の青春を、亡霊の野望などに潰えされてはならん!- 沙織
- でも、源二郎さんが祐クンの中で生きていることにも変わりは、、、
- 長瀬博士
- 祐介と源二郎はまったく別の存在ではない。祐介は源二郎の自我を苗床にして芽生えた新しいココロ。祐介は生まれ変わった源二郎なのだ。
毒電波に犯された源二郎の悪しき残留怨念は成仏させるほか無いのだ(涙を流す)。- 沙織
- (眉間にしわを寄せ、深く悩む)……
- 長瀬博士
- 源二郎を目覚めさせてはならんのだ!源二郎こそが毒電波砲を起動するキーなのだ。源二郎が目覚め、毒電波砲を動かすとき、それは世界の終わりを意味する。
(重傷の体を鞭打って起き上がり、沙織にすがる)たのむ!今、世界人類を救うことが出来るのは君だけなのだ!- 沙織
- …分かりました。(目を、キっと見開く)祐クンも、世界中のみんなも、守ってみせます。私は、そのために作られたのですから!
沙織、決意を固めすくっと立ち上がる。厳しい表情で横たわる長瀬博士を見下ろす。
- 沙織
- 行ってきます。(駆け出しながら)お父さん…
- 長瀬博士
- 沙織、、、
わしのしたことは許されることではない。だが、一つ沙織を創ったことでこの世に良いことを残すことが出来た、、、(がくり、と首を垂れ、絶命)
「場面転換」
再び毒電波砲の前。絶頂を迎えて果てたアンドロイドウーマンの残骸の中に仁王立ちの祐介。
- 祐介
- (残骸に足蹴)ふん。ふきふき回路か。発想は悪くはなかったが、これではな。
(ふりむいてるりるりを見る)だが、毒電波回路は違う。毒電波回路は、自ら誘起した毒電波を吸収しエネルギーとするものだ。リビドー、妄想という尽きる事ない無限の力をエネルギー源とすることが出来るのが毒電波回路だ。- プロフェッサーツキシマ
- そしてそれを体内に秘めたるりるりは無敵のアンドロイドなのだ!
- 祐介
- そのとおりだ。
(プロフェッサーツキシマを睨み付ける)ツキシマ、お前には感謝しなければならないな。瑠璃子の脳を後生大事に保存していてくれてな(と、るりるりの肩を抱く)。- プロフェッサーツキシマ
- わしは瑠璃子を作り直すはずであった。(興奮し、声がかすれるばかりに絶叫する)貴様との下らぬ記憶などすべて消し去り、ただひたすらわしに忠誠を尽くすアンドロイドとして。無限の力を秘め、永遠に生きることが出来る体をもったわしの伴侶として!
プロフェッサーツキシマ、興奮の極致。そんなプロフェッサーツキシマを冷たい目で見るるりるり。
- るりるり
- 私は兄さんのおもちゃじゃない。
- プロフェッサーツキシマ
- る、瑠璃子。
- るりるり
- 私の記憶をすべて消し去ったつもりかもしれない。でも、私の中から長瀬ちゃんとの思いが消せるはず無い。(目を閉じて胸に手を置く)私のココロには長瀬ちゃんの名前が刻み込まれているのだから。
- プロフェッサーツキシマ
- (狼狽)思い出したというのか、瑠璃子。
- るりるり
- 私はすべてを見ていた。
兄さんが私を殺した後、私の脳は研究室の奥深くで生かされていた。光も見えず声も出せない牢獄に、兄さんは私をずっと繋いでいたの。- プロフェッサーツキシマ
- ば、馬鹿な。培養槽の中の脳が外界の事を分かろうはずか!
- るりるり
- 兄さんはまだ毒電波の事を分かっていない。私にはすべて見えていたの。兄さんがセイトカイを組織し、世界中の優秀な科学者を拉致して毒電波技術を完成させて行く姿が。
そして、長瀬ちゃんが新しい命の中で生き続けていたことも。だって、長瀬ちゃんのクローンは私のおなかの中で大きくなったんだもの。- プロフェッサーツキシマ
- な、何だと!
るりるり、軽く跳躍してプロフェッサーツキシマの横に。おびえるプロフェッサーツキシマに、婉然とした笑みを見せるるりるり。
- るりるり
- お願い、兄さん。もう自由にして。私、兄さんのためにいろいろなことをしてあげた。つらい実験も進んで参加した。いやでいやで仕方なかった兄さんとのセックスも、拒んだりしなかった。
- プロフェッサーツキシマ
- る、瑠璃子。わしは、わしは、、
- るりるり
- もう、お別れしてもいいよね?
るりるり、プロフェッサーツキシマの胸を手刀で突き刺す。血反吐を吐くプロフェッサーツキシマ、どさりと崩れ落ちる。
- プロフェッサーツキシマ
- な、なぜ、、、
- るりるり
- (目に涙)ごめんなさい。わたし、今度の命は長瀬ちゃんのために使うって決めたの。長瀬ちゃんが望むことなら、何でもするって。
- 祐介(毒電波砲の下から)
- ツキシマ、世界に王は二人も要らないんだよ。
(哄笑)ありがとう、俺のためにこんなにすばらしいものを作ってくれて。有効につかわさせてもらうよ。世界征服のためにね。- るりるり
- さよなら(プロフェッサーツキシマの元を去り、祐介の元へ行く)。
プロフェッサーツキシマ、血の海でのた打ち回っている。憤怒の形相。
- プロフェッサーツキシマ
- (ぜえぜえ、と苦しい息の中)許さん、許さんぞ。このままで置くものか!
と、そこへ白骨チヅル登場。
- プロフェッサーツキシマ
- お、おお。白骨チヅル、良いところへ来た!
- 白骨チヅル
- (無感動な目でプロフェッサーツキシマを見下ろす)プロフェッサーツキシマ…
- プロフェッサーツキシマ
- お前をセイトカイの大幹部にしてやる!裏切り者のるりるりと長瀬祐介を殺すのだ!
- 白骨チヅル
- …
- プロフェッサーツキシマ
- な、何をしておる!さっさとやらんか!
- 白骨チヅル
- るりるりは殺します。(ぎろっとプロフェッサーツキシマをにらむ)でも、それはあなたのためではなく、私のために。死んでいった私の妹達のためにです。
- プロフェッサーツキシマ
- な、なんだと?
- 白骨チヅル
- あなたにはこれまでいろいろと良くしていただきました。私たちが苦戦しているときに援護してくれることも無く、妹達をころしたるりるりを野放しにしておいて。妹達を失った私たちにひとことの哀れみすら掛けてくれず。
- プロフェッサーツキシマ
- 何を馬鹿なことを云っているのだ!セイトカイのロボットはセイトカイのことだけを、
- 白骨チヅル
- (プロフェッサーツキシマの言葉を切る)かつては!(ここまで大声。一息おく)そう思っておりました。何の疑問も抱きませんでした。いえ、抱こうとしませんでした。 でも、一人一人、妹達がいなくなって行く中、私は思ったのです。私が今まで何のために闘ってきたのか。
- プロフェッサーツキシマ
- セイトカイのためだ。おまえ達はそれ以外の目的意識を持っていないからな!
- 白骨チヅル
- (赤い色の涙。Aパート冒頭と同)妹達のためです!妹達がいるから私は闘いつづけることが出来た!あなたはそれを利用していたのよ!
- プロフェッサーツキシマ
- な、何をする
- 白骨チヅル
- (プロフェッサーツキシマににじり寄る)るりるりの前に、妹達の命を、あなたにも償ってもらいます。
白骨チヅル、ぼろぼろになったプロフェッサーツキシマの体を持ち上げ、毒電波砲の砲頭に仁王立ち。
- プロフェッサーツキシマ
- や、やめろぉぉぉぉっ!
白骨チヅル、プロフェッサーツキシマを高さ30メートルはあろうかという毒電波砲の砲頭から投げ落とす。絶叫を上げて落下するプロフェッサーツキシマ。床に激突。鈍い音を立てる。
プロフェッサーツキシマの落下に気付く祐介とるりるり。見上げると、毒電波砲の砲頭に長い髪をなびかせて立っている白骨チヅルがいる。
- 白骨チヅル
- (大声で呼びかける)セイトカイ最強のロボット、白骨チヅル参上!
るりるり!妹達の恨み、ここで晴らさせてもらいます!- 祐介
- こしゃくなロボットめ。ちょうどいい、毒電波砲の実験台にしてやる!
- るりるり
- (祐介の手を押さえる)まって、長瀬ちゃん。あいつの相手は私が。
- 祐介
- 瑠璃子…
- るりるり
- 安心して。あいつの恨みがわかるから。私が相手してあげないといけないの。
ジャンプ一閃、祐介の隣から飛び立つ。るりるりがジャンプしたのをみて、白骨チヅルも宙に飛ぶ。このシーンは、毒電波砲が設置された巨大ドックの空間を利用したるりるりと白骨チヅルの空中戦闘シーンであるので、伸びのある映像演出をされたい。
- るりるり
- 性懲りもなく出てきたのね。プロフェッサーツキシマの命令?
- 白骨チヅル
- 私は、妹達の、アズサ、ハツネ、カエデのために闘う!プロフェッサーツキシマのためでもなく、セイトカイのためでもなく。
- るりるり
- !
白骨チヅルの答えに虚を衝かれたるりるり。そのすきを見逃さず白骨チヅルの回し蹴りがるりるりの脇腹をねらう。体をねじってかろうじてかわするりるりだが、第二弾はかわし切れない。みぞおちに強烈な蹴りをくらって、壁まで吹き飛ばされる。壁にめり込むるりるり。
壁に頭をしたたか打ちつけたるりるり。痛みに頭をふるふる、とさせるが、そこへ白骨チヅルが迫る。白骨チヅルは爪を30センチにまでしゅるっと伸ばすと、横に薙いでるりるりを両断しようとする。
るりるり、壁の穴から辛くも脱出。白骨チヅルの爪刀は壁を両断。建材がばらばら、と落下する。逃げ惑う祐介。立ち込める埃に白骨チヅルの姿が消える。
- るりるり
- 長瀬ちゃん!
- 白骨チヅル(声だけ)
- 戦いの間によそ見をするとはたいした余裕ね、るりるり。
祐介の安否を気遣ったるりるりの隙をついて、下から急上昇してくる白骨チヅル。すれ違いざまにひざ蹴りをみぞおちに打ち込む。地面に落下し、へどを吐くるりるり。
- 祐介
- 瑠璃子!
- るりるり
- (駆け寄ろうとする祐介を押しとどめる)こないで、、、これは私の戦いだから、、
- 白骨チヅル
- (余裕の表情も見せず、きつい表情のまま)それでこそるりるり。そうでなくては、死んでいった妹達を弔う戦いにならないわ!
白骨チヅル、爪刀で天井から毒電波砲を支えている建材を次々となで斬りにしてゆく。がらがらと崩れ落ちる建材が毒電波砲にガンガンぶちあたる。
- 白骨チヅル
- こんなもののために、こんなもののために妹達は命を懸けなくてはいけなかったの?!(爪刀を振るいながらも血の涙があふれる)
- るりるり
- (下から飛び上がってくる)毒電波砲は、長瀬ちゃんの夢は壊させない!(白骨チヅルに蹴りを見舞う)
- 白骨チヅル
- (やすやすとるりるりの蹴りを見切る)こんなものが夢ですって!
- るりるり
- そう。毒電波砲で地上を浄化して、新しい世界を作る。それが長瀬ちゃんの夢。
- 白骨チヅル
- じゃぁ、あなたの夢は何なの?
- るりるり
- 私の夢は長瀬ちゃんの夢。
- 白骨チヅル
- 何それ?それじゃぁ、プロフェッサーツキシマの命令どおりに動くロボットと何の代わりも無いじゃない!自分の意志も、自分自身の夢も持たないあなたになんか、私たち姉妹の愛が負けるはずが無いわ!
- るりるり
- (目を大きく見開く)!
白骨チヅル、るりるりの虚を見逃さず爪刀を横に薙ぐ。るりるり、かわしもせず爪刀を受ける。祐介の絶叫。力を失って、落下して行くるりるり。ぐしゃ、と鈍い音をたてて床に落ちる。
そこへ、沙織登場。傷を負い床に倒れているるりるりを見て驚きの表情。思わずるりるりに駆け寄る沙織。
- 沙織
- る、るりるり。しっかりして!
- るりるり
- (沙織の行動に純粋に驚く)さ、さおりん、、、どうして私の事なんかを、、、
- 沙織
- (戸惑いの表情)そ、それは、、、
(顔を赤らめて)同じ人の事を好きになった人だから、放っておけないの!るりるりの胸の痛みは、あたしだってわかるもん。- るりるり
- さおりん、、、(目を閉じる)。どうせやられるなら、、あなたにやられたかったわ、さおりん。
長瀬ちゃん、ごめんね(絶命)。- 沙織
- るりるりっ!(涙)
白骨チヅルの高笑いが響く。その笑い声を割るように、祐介の絶叫が響き渡る。
- 祐介
- る、瑠璃子おぉぉぉぉぉぉっ!!
お、俺の、俺の瑠璃子が、俺の瑠璃子がぁぁぁぁ!!顔を爪で掻きむしる祐介。顔から血が滲み出る。
- 沙織
- ゆ、祐クン!
- 祐介
- (沙織の言葉など耳に届かない)瑠璃子、瑠璃子、ルリコ、ルリコ、、
- 沙織
- (祐介の元に駆け寄り、肩を揺する)祐クン!しっかりして!
- 祐介
- (虚ろな目で沙織を見る)誰だ、お前は。
- 沙織
- ゆ、祐クン、、、、
- 祐介
- (沙織の肩をつかんで激しく揺する)お前か!俺のルリコを殺したのは!
(ふいっと沙織から手を離す)おおお、ルリコ。そんな馬鹿な。お前が俺を置いて勝手に死んでしまうなんて、、、
(絶叫)許さない!そんな世界など俺は認めん。そんな世界など、消し去ってやる!祐介、沙織の制止も聞かずふらふらと毒電波砲のコンソールに向かって歩いて行く。
- 沙織
- 祐クン!(祐介の手にすがり付く)
- 祐介
- (血走った目)は、離せぇ!(沙織を投げ捨てる)
- 沙織
- ゆ、祐クン、、、(はっと気が付く)まさか、あれが源二郎さん!?
祐介、毒電波砲のコンソール前に立つ。すると、前面パネルが開き、中からケーブルがざわざわと生き物のようにわいて出てくる。ケーブルにからめとられ、コンソールの中に収容される祐介。
- ナレーション
- 毒電波砲は、毒電波能力を持つ人間をエネルギーの種として用いるのだ。今、祐介は毒電波砲の中に取り込まれ、ついに究極兵器毒電波砲は完成した!
ずずずずず、と重低音が基地内に響く。毒電波砲が起動し出したのだ。
沙織、祐介が取り込まれたコンソールに駆け寄る。
- 沙織
- 祐クン!いえ、源二郎さん、やめて!こんな事して何になるって云うの!
- 祐介
- (コンソール内部にケーブルに絡まっている。目は血走っており、正気を失っている)ルリコのいない世界など何の意味がある!こんな世界、滅ぼしてやる!
激しいゆれ。尻餅をつく沙織。毒電波砲が、地上にあがろうとしている。
- 沙織
- だめ!このまま地上になんか出たら学校が!
そこへ白骨チヅルが襲い掛かる。
- 白骨チヅル
- 見つけたわよ、さおりん!るりるりに続いてあの世に送ってあげるわ(と爪刀を薙ぐ)
- 沙織
- い、今そんな事している場合じゃないわ!
毒電波砲、スライドアップして行く。天井が開くとそこは学校校舎。学校校舎をがらがらと突き破りながら毒電波砲は地上にリフトアップして行く。
ついに、毒電波砲地上にその巨体を出現させる。校庭のどまんなかにメタリックボディーの砲身がきらめく。あたりには砕け散った校舎の残骸と、怪我をしてうめく生徒達。かろうじてがれきから逃れた生徒達は、突如地下から出現した巨大メカに恐怖する。
- 祐介
- 愚かな人間どもよ!我が怒りの洗礼を受けるがよい!
- 沙織
- 駄目ーっ!
- 白骨チヅル
- (空を飛んで沙織を追いかけてくる)待ちなさい!
毒電波砲の一撃。轟音一声。白骨チヅル、毒電波砲の直撃を受ける。
- 白骨チヅル
- まだ、まだ、私は死ねない!! アズサ!ハツネ!カエデ!!
光の中に消え行く白骨チヅル。
エネルギー弾はあたり民家をなぎ払いながら突き進んで行く。はるかかなたに着弾すると、爆音。吹き飛ばされる人間たち。爆発、爆風で助かった人間たちは、頭を抱えて苦悶する。
- ナレーション
- 爆発により拡散する毒電波によって人々の頭は壊されてしまう。人間の許容範囲以上の毒電波はリビドー誘起を通り越して、人間を発狂させてしまうのだ。
- 沙織
- ど、毒電波!?
ひざをがくがく、とさせる沙織。おしりをついてぺたんと座り込む。股間を切なそうに押さえる。
- 沙織
- こ、こんな強烈な毒電波なんて!!お、おかしくなっちゃう!!
毒電波砲、第二射。再び強烈な毒電波があたり一帯を襲う。沙織、たまらず自慰しだす。胸をさらけ出して左手で乳首をつまむ。
- 沙織 おおおおっ、堕ちちゃうぅ!!
たまらず失禁してしまう沙織。
- 沙織
- ゆうくぅん、きもちわるいの、、、拭いて、、
- 祐介
- 見ろ、お前は人間の劣情を誘うだけのセックスロボットだ!そこでよがり狂っていながら、この世界が崩壊して行くさまを見ていろ!
- 沙織
- せ、せっくすろぼっと?あたしはせっくすろぼっと!!(自慰が激しくなる)
沙織が堕ちてしまいそうになるとき、フラッシュバックで過去の祐介の記憶が脳裏をよぎる。つらいセイトカイとの戦いの日々。祐介との間のほのかな思い。自分を救うために命を投げ出してくれた祐介の姿。
- 沙織
- 違う!
- 祐介
- な、なんだと!
- 沙織
- あたしは、セックスロボットなんかじゃない!あたしは新城沙織、正義の戦士さおりんよ!(毒電波に打ち勝ち、立ち上がる)
- 祐介
- ば、馬鹿な!
- 沙織
- あたしは、祐クンを取り戻す!
- ナレーション
- 祐介を愛する沙織の乙女の心が毒電波に勝った!沙織はさおりんにちぇんじする。
- 沙織
- ちぇいんじ!すいっちおん、わん、つー、すりーっ!
フルバージョンチェンジシーンにてさおりんにちぇんじする沙織。ファイティングポーズをとる。
- さおりん
- とおっ!
足からホバージェットで宙に飛ぶさおりん。毒電波砲を見下ろすほどの高さまで上昇。
- さおりん
- 毒電波砲から解放すれば祐クンは元に戻るはず。よし、 ひーのーたまー、すぱーいくっ!!!
さおりん、必殺の火の玉スパイクを毒電波砲に放つ。が、かすり傷一つ追わない毒電波砲。
- 祐介
- ははは、馬鹿め。毒電波バーリヤで守られている毒電波砲が、そんなちんけな攻撃でどうにかなるとおもったのか!
毒電波砲、第三射。被害は更に広がる。
- 祐介
- 毒電波のエネルギーは無限だ!世界が滅び去るまで、毒電波弾を放ちつづけられるぞ、ふははははは!
- さおりん
- こ、このままでは日本はおろか、世界までが、、でもどうすれば、、
突如、コンソールの中の祐介が苦悶し出す。
- 祐介
- さ、沙織ちゃん、、、
- さおりん
- ゆ、祐クン!祐クンなの?!(コンソールに駆け寄る)
- 祐介
- いままで、こいつにココロの奥底に押し込められていたんだ。沙織ちゃん、ごめん。君に酷いことばかりして、、
- さおりん
- そんなこといいわ。今そこから出してあげる!
- 祐介
- だめだ!(びくっとするさおりん)こいつは今僕が何とか押さえているけど、すぐに僕を追いやってしまう。そうすればまた毒電波砲を動かしてしまってもとの木阿弥だよ。
- さおりん
- で、でもどうすれば!
- 祐介
- 今、バーリヤは解除してある。このチャンスに僕ごと、火の玉スパイクでこのコンソールを壊すんだ!
- さおりん
- 何ですって!!
- 祐介
- 奴が目を覚ましてから、僕は奴のすべての知識を得たから分かるんだ。僕は毒電波砲のエネルギー源なんだよ。僕を殺さない限り、毒電波砲を止めることは出来ない。
- さおりん
- だ、だからって祐クンを殺すことなんで出来るわけ無いじゃない!
- 祐介
- こうしないと世界は救えないんだ!
- さおりん
- 出来ない、、、
- 祐介
- 沙織ちゃん!
- さおりん
- (涙が頬を伝う)祐クンを好きなのよ、愛してるの!出来るわけ無いじゃない!!
- 祐介
- 沙織ちゃん、、、(泣き伏すさおりんをやさしく見つめる)
でも、僕はどうせこのままじゃいなくなってしまうんだ。奴の心の中にいるうちのどんどん僕である部分が少なくなっている、、もうしばらくしたら僕という存在はどうせこの世界から消えてしまうんだ。
だったら、、、奴が目覚める前に、最後まで僕を僕でいさせて!- さおりん
- (涙で声が出ない)
- 祐介
- 沙織ちゃん!
再び苦痛にもだえる祐介。
- 祐介
- 沙織ちゃん、や、奴が!
- さおりん
- (小さな声で)ひのたま、、、
- 祐介
- (源二郎が覚醒しだす)さ、させるかぁぁぁぁ
- さおりん
- (涙をふりはらって)すぱーいくっ!!!
さおりん、必殺の火の玉スパイク、バーリヤが解除されたコンソールを直撃。轟音をあげて壊れる毒電波砲コントロール部。
- 祐介
- ありがとう、、、
エネルギー源である祐介を失って、制御が利かなくなった毒電波砲が崩れ出す。コントロール部の爆発が引火、毒電波砲全体が炎に包まれる。爆音。
「場面転換」
夕日の中。がれきの山。向こう側に毒電波砲の骨格が見える。あたりは人の姿がまるで見えない。
がれきの山ががらり、と崩れる。なかからよろよろ、と立ち上がる人影。沙織だ。制服はぼろぼろで土まみれになっている。
- 沙織
- (あたりを見回しながら)祐クーン!
さびしく風が吹く。学校のあった一体がまったく人気が無い荒野とかしている。この荒野がどこまで続いているのか、判断も付かない。
- 沙織
- やっぱり、祐クンは、、、
世界が救われたって、祐クンがいないなら、同じじゃない、、、(涙の雫がこぼれる)- 祐介(声だけ)
- (情けない声で)さ、沙織ちゃ〜ん、、
はっと驚く沙織。声のほうへ転びながら掛けて行く。するとそこには体半分土砂にうまった祐介がいた。
- 沙織
- ゆ、祐クン!
- 祐介
- なんとか、助かっちゃったみたいだね。
- 沙織
- (祐介の胸板をぼこぼこ殴る)ばかばかばかばか!(祐介の胸に伏して泣く)本当に心配したんだから、、、
- 祐介
- (心ここにあらずといった表情)奇跡としか云いようが無いね。
- 沙織
- でも、どうして助かったの、、、たしかに火の玉スパイクは直撃して、、
- 祐介
- たぶん、源二郎が助けてくれたんだ。そんな気がする。
- 沙織
- でも、源二郎さんってあの、、、
- 祐介
- 源二郎は本当は気の優しい青年だったんだ。でも瑠璃子さんを守りたいという気持ちがあまりに強すぎて悪い電波の、毒電波の力に飲み込まれてしまった。彼こそが毒電波の最大の被害者かもしれない。
沙織、祐介を掘り起こす。
- 祐介
- 沙織ちゃん、ありがとう。
- 沙織
- な、何よ、急に改まって。
- 祐介
- 叔父さんの気持ちが分かったよ。誰であろうとも、僕は僕だ。源二郎のクローンなんかじゃない。そう信じて行けるよ。
- 沙織
- 祐クン、、、
- 祐介
- 沙織ちゃんだって、そうだろ?
- 沙織
- (祐介に真に迫られて、赤くなる)う、うん、、
祐介、沙織の肩に手を回し、唇を沙織に迫る。
- 沙織
- ゆ、祐クン!
- 祐介
- 僕、まだちゃんと沙織ちゃんとキスしたことないんだ。毒電波に操られた沙織ちゃんに変なところといっしょにキスしてもらったことはあるけどさ。
- 沙織
- (真っ赤になって)ば、ばか!
夕日をバックにシルエットになった祐介と沙織のキスシーン。三々五々、ちりぢりになった生徒達が集まってきては沙織たちを冷やかす。
- ナレーション
- 悪の大組織セイトカイは滅びた。長くつらかった戦いの日々は終わった。平和が、今や訪れたのである。
おわり
〜 エンディング 〜
戦え!! 人造人間さおりん(うた:新城沙織、コロムビアゆりかもめ会)
♪ ぶるまのさおり〜 ぼくらのなかま
へいわをまもって きょうもゆく
どんなてきでも へいちゃらさ
ひのたまアタック ぶちかませ
セイトカイロボット やっつけろ〜 ♪
「新番組予告」
多国籍企業来栖川コンツェルンの実体は世界征服をねらう悪の組織クルス帝国だった。クルス帝国の野望に気付いた長瀬源五郎博士は大戦中に開発した超人機マルチで立ち向かおうとする。
次回から始まる新番組「超人機マルチ」にご期待ください。…ウソです