さおりんこと新城沙織は、ふきふき回路を心に持つアンドロイドである。
プロフェッサーツキシマ「それでいい、それでいいのだるりるり」 著:Yu.N、挿絵/オープニング/エンディング作詞:sugich |
〜 オープニング 〜
ゴーゴー・さおりん(うた:新城沙織、コロムビアゆりかもめ会)
♪ スゥィッチ〜オン ワン ツー スリー
でんりゅうひばなが あたまをはしるぅ
さおりん チェィンジ あかブルマ〜
セイトカイロボット むかえうて
じんぞうにんげん さおりん〜
チェインジ チェインジ
ごぅごごぅごぅ ごごっごー!! ♪
ちゃかちゃかかーん ちゃっちゃっ
第37話 沙織の妹、強敵るりるり
じゃーん
地下と思われる、あやしげな研究室。暗闇の中、壁一面に設置された機械のランプが点灯しているのが見える。メイン動力からと思われる不気味な低音の動作音が響く。
部屋の中央にベッドほどの大きさの作業台がある。その上には完成間際の人造人間が横たわっている。
大きなスパナを片手に、組み立て作業をしている長瀬博士。作業を一休みし、額の汗をぬぐう。
- 長瀬博士(伊豆肇)
- (ため息をつきながら)人造人間るりるりか、、、私は何と恐ろしいものを作ってしまったのだ。
こんなものが、完成してしまったら人類はどうなってしまうのか、、、
(手に持ったスパナを振りかぶりながら)こんなもの、こんなもの完成しない方が良いのだ!そこへ、壁際に取り付けられた階段をプロフェッサーツキシマが降りてくる。
顔が、下から青いライトに照らし出され不気味さを演出する事。
- プロフェッサーツキシマ(安藤三男)
- (ぼそぼそと、聞き取りにくい声で)何をしているのだ、長瀬博士。
- 長瀬博士
- い、いや、ちょっと一休みしていたところだ。人造人間るりるりは、あと一週間もあれば完成するだろう。
- プロフェッサーツキシマ
- (突如として激怒)遅い!一体お前は、るりるりの完成にどれほどの時間をかければ気が済むのだ。
毒電波回路を体内に秘めた人造人間るりるり。全世界征服のため、これの完成は我がセイトカイの急務なのだ。
(くるり、と長瀬博士の方を振り向く。ぎろり、と長瀬博士を睨み付け、低い声で)急げ。さもなくば、貴様の甥がどうなるか、わかっておろうな。- 長瀬博士
- (プロフェッサーツキシマの激怒に震えおびえながら)わ、わかっている。完成は急がせる。だから祐介には手出ししないでくれ。
プロフェッサーツキシマは長瀬博士の答えなど意に関しない様子。作業台に横たわる未完成のるりるりをじっと見つめる。
「場面転換」
- プロフェッサーツキシマ
- 瑠璃子、、、
画面の焦点がぼやけ、もう一度ピントが合うと、そこはセイトカイの秘密基地作戦室の一室。中央奥ほどの椅子ににプロフェッサーツキシマが座っている。先ほどまでの場面がプロフェッサーツキシマの回想シーンである事を示す。
セイトカイの科学者たち(顔にはペインティングを施しておく事)が手前に置かれた箱で何やら作業をしている。
- プロフェッサーツキシマ
- (独白)長瀬めが脱走してから、るりるりの完成にここまで時間が掛かるとは、、 だが長瀬、もはや手後れだ。毒電波回路の威力を、我がセイトカイが世界を征服する様を見るがよい。、
- 科学者A
- プロフェッサーツキシマ、毒電波回路調整作業、すべて完了いたしました。
- プロフェッサーツキシマ
- (低い声でぼそぼそと)よくやった、、、ではその成果を見せてもらおう、、、 でろ、、、、
(体をぶるぶる震わせ、感情を爆発させて)出てこいっ、るりるり!暗転。るりるりのテーマ(サントラ)をBGMに、手前の箱の中からむくり、とるりるりが立ち上がる。るりるりは漆黒のセーラー服に身を固め、焦点の合わぬ目で呆然と立ちつくす。
- プロフェッサーツキシマ
- 悪の戦士、セイトカイの作った最強のアンドロイド、人造人間るりるり!
お前はその体内に秘められた毒電波回路をあやつり、全人類をわがセイトカイにひざまずかせるのだ!
だが、その前に今まで我がセイトカイの野望をことごとく潰してきた、憎きさおりんめを追いつめるろ。追いつめて、そして、、、そして殺せぇっ!るりるりはスカートをたくし上げて、スカート下のホルスターからるりるりショットを抜き、作戦室内にいるアンドロイドウーマンを射撃の標的にして撃つ。全弾、アンドロイドウーマンの心臓部を打ち抜く。
アンドロイドウーマンの残骸からスパーク音が聞える中、プロフェッサーツキシマの高笑いが響く。
- プロフェッサーツキシマ
- それでいい、それでいいのだるりるり。
(ふっと、それまでの高揚感が失せる。誰にも聞こえない小さな声でつぶやく)今度はわしをうらぎるなよ、瑠璃子。
- ナレーション(岡部政明)
- セイトカイ最強の戦士、人造人間るりるりが遂に完成した。さおりんは、その恐るべき毒電波回路にいかにして立ち向かうのか。
「場面転換」祐介たちの通う学校。日ごろセイトカイのアンドロイドに襲われているせいで建物はあちこち壊れている。しかしながら、授業は平常通り行なわれている。
教室。淡々と授業が進められている。祐介は授業内容を聞くことも無く、黒板をただぼんやりと眺めている。
- 祐介(長瀬祐介)
- (独白)セイトカイが世界征服を着々とすすめているっていうのに、ここではのんびりと授業なんかしている、、、毎日僕たちが闘っていることなんか、誰も知らないで、得られる平和だけを享受しているんだ。
誰にも誉められる事もなく、僕たちは戦いの日々をすごすしかないのか、、- 女性教師
- 長瀬君、45ページの3行目からを読んで。
祐介は教師の声に応えず、じろっと教師をにらむ。
- 女性教師
- (苛立った声で)長瀬君!聞こえなかったの?教科書の…
- 祐介
- (女性教師の言葉を遮って)聞えてますよ。
- 女性教師
- だめでしょう、ちゃんと授業内容を聞いていないと、、
- 祐介
- (きっ、と教師をにらんで)先生こそ、セイトカイの脅威がひしひしと迫ってきているこの現実をちゃんと理解してもらわないと困ります。こんなくだらない授業なんかしている場合じゃないって事が分からないんですか?
- 女性教師
- (祐介のいきなりの言葉にたじろいで)そ、それは分かっています。(気持ちを落着けて)でも、わたしたちがどうにか出来る問題ではありません。わたしたちは、毎日ちゃんと授業をするしか、、
- 祐介
- (大声で)あんた達がそんなだから駄目なんだ!これじゃぁ。いつまで経っても、セイトカイに立ち向かう事すら出来ないじゃないか!
叫ぶと、祐介は教師の制止する声も聞かずに教室から駆け出す。
「場面転換」夕方。日の当たらない人気の無い体育館裏に、膝を抱えて座り込んでいる祐介。
そこへ沙織がやってくる。
- 沙織(新城沙織)
- (ほっとした表情で)やっぱりここにいた、祐クン。
- 祐介
- (きょとんとした表情)沙織ちゃん、、、
バレーの練習があるんじゃ、、- 沙織
- 祐クンのことが心配になったから、サボっちゃった。
(祐介のとなりに座る)聞いたわよ、授業を途中で抜け出しちゃったって。- 祐介
- (視線を下に向けたまま沙織の方を見ない)
- 沙織
- イヤな授業でも抜け出しちゃだめよ。退屈ならお昼寝しちゃえばいいんだし。
- 祐介
- (視線を下に向けたまま)…沙織ちゃんはこのままでいいと思ってるの?
- 沙織
- 祐クン…
- 祐介
- 沙織ちゃんが毎日必死になって闘っているおかげで、みんな平和な日々を過ごす事が出来てる。でも、こんな平和なんてかりそめのものなんだ。もし沙織ちゃんにもしものことがあったらどうなるんだ!だから、この平和を守るためには僕たちだって、闘わなくちゃいけないんだ。
- …でも、オトナたちは何もしない。セイトカイが攻めてきたらおびえて逃げるだけなんだ。そして、セイトカイが去ったら、さっきまでのことなんか忘れてしまう。そして、僕たちにはただ授業をしろとだけ云って、現実から目を背けさせようとする。
(ぐっとこぶしを握り締めて)こんなことで、こんなことでいいわけないよ!- 沙織
- (やさしい表情で微笑む)いいのよ、これで。
- 祐介
- 沙織ちゃん!
- 沙織
- だれもがみんな闘える訳じゃないわ。自分の事を守ることだけでも精いっぱい。 でも、そのためにあたしが創られたの。
(ニコッと微笑んで)勇気を出す事が出来ない人の代わりに、平和を守るために闘う。それがあたしの役目なんだから。
(やさしく祐介の肩に手を置く)だから祐クン、そんなに思いつめないで。- 祐介
- (かぶりを振って)でも、でもそれじゃ、沙織ちゃんだけがかわいそうだ! 沙織ちゃんだって、もっと普通の女の子として普通に幸せにならなきゃだめなんだ!
祐介、走り去る。一人残される沙織。
- 沙織
- (両の頬に両手を添える。ぽぉっとほほが紅潮する)祐クン…
突如銃撃音。沙織の足元が撃たれ、尻餅をつく沙織。
- 沙織
- (あたりを見回す)だっ!だれっ!
BGMるりるりのテーマ(歌詞付き)。
- るりるり(声だけ)
- …ずいぶんとご立派なこというのね…
はっとする沙織。屋上を見上げると、そこにはるりるりショットを構えたるりるりがいる。
- 沙織
- セイトカイのアンドロイドね!この学園で勝手な真似はこのあたしがさせないわ!
- るりるり
- 本当にこの世界の人たちは守るに値するの?
あなた一人だけが、世界を守っても誰からも感謝されない。ほんとにそれで良いと思ってる?- 沙織
- 当たり前じゃない!
- るりるり
- (沙織の言葉にもまったく反応せず、焦点の合わぬ目でただ前方をみている)
…あなた、あの虫けらみたいな連中のホントの汚さを知ってるの?- 沙織
- な、何をいうの。
- るりるり
- …わたしはセイトカイの悪の戦士、るりるり。
さおりん、あなたの命はわたしがもらう…るりるりショットを連射するるりるり。側転で逃れる沙織。
- るりるり
- 甘く見ないで…このるりるりショットの毒電波弾はどんな機械でもたちどころに破壊するの…
- 沙織
- (ジャンプして)とうっ!ちぇぃんじっ!
簡易版変身シーン。沙織はさおりん(赤ブルマー体育衣デザインのスーツ)にチェンジする。
チェンジしたさおりんの所へ、るりるりもジャンプして飛び込んでくる。
るりるりの回転回し蹴りの連打を、両手のガードでからくもこらえるさおりん。
意表を突いた正面蹴りに、吹き飛ばされるさおりん。
- さおりん
- (うつぶせに倒れて)ううっ
- るりるり
- …もうおしまいなの?
(るりるりショットをさおりんに向けて構える)わたしは弱い人は嫌い。- さおりん
- たぁっ!
回転一閃、サマーソルトキックでるりるりショットを跳ね飛ばしつつ、後方に飛びすさってるりるりとの距離を取る。
- るりるり
- (ぽつりとつぶやくように)なかなかやるのね…さすがはさおりん。わたしも殺しがいがある。
るりるりはるりるりショットを乱射。後ろにあるブロック塀を壊してもうもうと砂ほこりを上げる。
砂ほこりのなか、物影が動く。
- さおりん
- そこかっ!
ジャンプ一閃、キックするがるりるりと思った物影は壊れたブロック片だった。さおりんの注意をブロック片に引き付けた所で、るりるりはすぐさまさおりんの懐に入り込み、みぞおちに正面蹴りをする。
- さおりん
- ぐはっ!(腹を抱えてへたり込む)
- るりるり
- (冷たい目で)そこまでのようね、さおりん(るりるりショットの銃口を額にごりっと押し付ける)。
- さおりん
- (歯を食いしばって)ううっ
- 祐介
- (遠くから声だけ)おーい、沙織ちゃん大丈夫かい!
そっちの方からすごい音がしたけど!
- るりるり
- (祐介の声を聞いて、ふっと微笑む)命冥加なものね、さおりん。今日のところは見逃してあげる…でも、この次会う時はあなたの最後…
足元からジェット噴射。宙へ飛び去るるりるり。入れ替わりに祐介登場。あたりの惨状を目にして驚く祐介。がれきの中に傷ついて苦しんでいるさおりんを見つけて駆け寄る。
- 祐介
- 沙織ちゃん!大丈夫!(あたりを見回して)一体どうしたっていうんだ!
(さおりんを抱かかえて)セイトカイの連中がまた来たのかい?- さおりん
- るりるり、、なんて強いの。うっ(と、気を失う)
- 祐介
- 沙織ちゃん!!
「場面転換」セイトカイ秘密基地。椅子に座り考え込んでいるプロフェッサーツキシマ。
- プロフェッサーツキシマ
- (ぼそぼそとつぶやくように)今一歩のところまでさおりんめを追いつめておきながら、、、なぜ長瀬祐介ごと殺さなかったのだ。
瑠璃子、もしやお前長瀬祐介にあやつの姿を見ているとでも云うのか、、
(急に大声で)アズサムラサキ!プロフェッサーツキシマの声に、天井に通入口が開いてそこから紫色のボンテージスーツに身を固めた少女(アズサムラサキ)が宙に浮いて降りてくる。
「場面転換」
- アズサムラサキ(柏木梓)
- おーよーびでしょうかー、プロフェッサーツキシマ。
- プロフェッサーツキシマ
- アズサムラサキ、お前は長瀬祐介めを誘拐し、さおりんと祐介を分断するのだ。
- アズサムラサキ
- わかりました。誘拐した祐介はどのようにいたしますか。
- プロフェッサーツキシマ
- (引きつった笑いを浮かべて)改造するなり殺すなり、好きにしろ。
(独白)同じ過ちは二度とさせんぞ、瑠璃子。セイトカイ秘密基地の一室。アズサムラサキに出撃命令が下った事をしって、姉妹ロボット3体(ハツネグレイ、赤地雷カエデ、白骨チヅル)がアズサムラサキに元にやってくる。
- ハツネグレイ(柏木初音)
- やったね!お姉ちゃん、遂にデビューだね!
- 白骨チヅル(柏木千鶴)
- でも、アズサはそそっかしいから、今から心配だわ。
- アズサムラサキ
- なんだい!チヅル姉は今からあたしが失敗するみたいな事いって!
- このスーパーロボット、アズサムラサキ様が、長瀬祐介誘拐ごときで失敗するはずないじゃない!
- 赤地雷カエデ(柏木楓)
- …
- ハツネグレイ
- で、お姉ちゃん、どんな作戦を立ててるの?
- アズサムラサキ
- それはもちろん、このあたしがセイトカイに追われている可憐な少女に扮して、長瀬祐介に近づいてさ、
- 白骨チヅル
- ……
- 赤地雷カエデ
- ……
- ハツネグレイ
- (口元を引きつらせながら)お、お姉ちゃん、その作戦多分駄目だと思うんだけど……
- アズサムラサキ
- なんでぇ!あたしが一晩寝ないで考えたすっばらしい作戦を!
- 白骨チヅル
- (口元は笑っているが目は笑っていない。ぽん、と両手をアズサムラサキの肩に置いて)アズサ、あなたはその体のパワーを生かすだけでいいのよ。余計な事は考えないで、長瀬祐介を力ずくで襲うことがベストだと思うわ。
- 赤地雷カエデ
- (こくこく)
- アズサムラサキ
- …なんか、ずいぶんな事云われてるような気がする…
- ハツネグレイ
- (無理に笑顔を作って)き、気のせいだよお姉ちゃん。
- 白骨チヅル
- さぁ、行きなさいアズサムラサキ!
- アズサムラサキ
- おうっ!
天井を突き破ってアズサムラサキは飛び出してゆく。ぱらぱらとこぼれ落ちてくるほこりをかぶってせき込む一同。
- ハツネグレイ
- お姉ちゃん大丈夫かなぁ。
- 白骨チヅル
- (心配顔で)アズサ、、
傍らで手を組んで祈る赤地雷カエデ。
「場面転換」朝の教室。授業前に勝手な会話を楽しみはしゃぐ生徒達。そこへ祐介が入ってくると、急にシンと静まりかえる。席に付こうとする祐介を奇異の目で見詰める生徒達。
- 少年A
- ほら、正義の味方様のおいでだせ。
- 少年B
- (祐介に聞こえるように)くだらない授業なんかしている場合じゃないですよーってか(少年Aと笑い会う)。
- 少女A
- (小声で)長瀬君、また変になっちゃったね。
- 少女B
- 前と比べると、ずっととっつき易くなってたのにね。
どかり、と席につき生徒達の揶揄の声を無視して外の景色を眺める祐介。
- 祐介
- (独白)勝手な事ばかり云いやがって。お前たち、ぼくの何を知ってるって云うんだ!
お前たち、セイトカイのアンドロイドに追い回されて死にそうな目にあった事あるのか!毎日平和な中でただ生きてるだけのお前たちに、何を云う資格があるって言うんだ!授業開始のベルが鳴る。教室に担任教師が入ってくる。教師の後ろについて少女が入ってくる。少女をみてざわめく教室。
- 担任教師
- あー、急な話だが、今日から君たちの友達が一人増える事になった。
名前は(と、黒板に向かって「月島瑠璃子」と書く)月島瑠璃子君だ。
月島君、自己紹介をして下さい。
- 瑠璃子(月島瑠璃子)
- 月島…瑠璃子です。…よろしく。
ざわざわ、と男子を中心にざわめきが起きる。
瑠璃子は、教室の中に祐介を見つけるとにこり、と微笑む。見知らぬ少女から微笑みかけられておどろく祐介。
瑠璃子はすたすた、と祐介の元に歩み寄ってゆく。
- 担任教師
- ちょ、ちょっと月島君。
瑠璃子は祐介の隣に座っている少女をじろりと一瞥する。
- 瑠璃子
- どいて?
- 少女C
- ええっ?何云ってるのあなた?
- 瑠璃子
- 「どいて」と云ったの。
- 少女C
- なんであたしが!そっちの方に開いてる席はたくさんあるの、みえないの?
それに席順は先生が決めるんだから勝手に…- 瑠璃子
- (少女の言葉を遮る。瑠璃子はにこりと微笑むが少女は背筋が凍り付く恐怖感を感じる)
聞こえなかった?どいて、と云ったの。瑠璃子の言葉が終るや否や、祐介の頭の中にちりちり、という不快な音/感触が響く。
- 祐介
- (苦悶の表情で頭を抱える。独白)な、なんだこのざらっとした感触は!
少女Cの体ががくがく、と震えたかと思うと、すぅっと立ち上がる。
- 少女C
- (ぎこちない声で)ワカリマシタ。
少女Cは荷物をまとめると開いている席へと移動する。その表情は瑠璃子に悪態を突いていたものとは別人のように、ロボットのようにうつろになっていること。
瑠璃子は祐介の隣の席に座る。驚き怪しむ祐介に、瑠璃子は不思議と暖かみが伝わってく様な微笑みを向ける。
「場面転換」昼休みの屋上。誰もいない屋上で、祐介はフェンスにもたれかかって風にあたっている。
- 祐介
- (憂うつそうに)月島瑠璃子、、一体何者なんだ。初めてあったのに、なぜか懐かしい。そんな気がする。どうしてだろう。
がちゃり、とドアの開く音がする。びくっとして祐介が振り向くとそこには瑠璃子がいた。
- 祐介
- 瑠璃子、さん。どうしてこんな所へ。
- 瑠璃子
- ここに来たら長瀬ちゃんに会えるような気がしたから。
- 祐介
- ぼくに?なんでぼくなんかに、、(消え入るかのような小さな声で)クラスの誰からも嫌われているぼくなんかに。
- 瑠璃子
- (祐介の瞳を正面から見据えて。しかしながらやさしい表情で)だれも長瀬ちゃんの事を嫌ってなんかいないよ。嫌っているのは長瀬ちゃんだけ。
- 祐介
- ぼくが?ぼくの事を?
- 瑠璃子
- (悲しそうに)そう。
だめだよ、自分の事を嫌いになっちゃ。瑠璃子は祐介の顔を包み込みように両手を添える。呆然とした表情を浮かべる祐介。
その時、ドアをばたんと開けて沙織が飛び込んでくる。
- 沙織
- (祐介と瑠璃子の間に割ってはいる)あぶない!祐クン!
沙織にどんとおしやられてよろめく瑠璃子。沙織のいきなりの行動に驚く祐介。
- 祐介
- 一体どうしたって云うんだい!沙織ちゃん!
- 沙織
- 気を付けて、祐クン。この子怪しいわ!
- 瑠璃子
- (幼女の様な表情で首をかしげて)…何が怪しいって云うの?
- 沙織
- (瑠璃子をきっ、と睨み付けて)悪いけど、あなたの事調べさせてもらったわ。一見、学校に提出された書類や戸籍はホンモノの要にみえるけど、あたしの目は誤魔化せないわ。
それはみんな巧妙に偽造されたニセモノ。
あなた一体何者?こんなに手の込んだやり方で祐クンに接近しようとするなんて。あなた、セイトカイのアンドロイドね!- 瑠璃子
- (すうっと目を細める)あわてないで、私はあなたの妹よ。
- 祐介
- えっ!
- 沙織
- (疑わしそうな視線で)長瀬博士に創られたアンドロイドだって云うの?信じられないわ。
- 瑠璃子
- 私はずっと長い間眠りについていたの。そして、もしさおりんに異常が生じたら起き上がるようになっていたの、自動的に。
- 沙織
- (拳を構えてガードを固める)信じろって云う方が無理だわ。
- 瑠璃子
- (あざけりの笑いを浮かべる)すくなくともわたしは、ふきふき回路を持ったあなたみたいな淫乱ロボットじゃないわ。
- 沙織
- (真っ赤になって)な、なんですってぇっ!!
瑠璃子に飛び掛かろうとする沙織を祐介は制止する。驚く沙織。
- 祐介
- 瑠璃子さんの話もちゃんと聞いてあげようよ、沙織ちゃん。
- 沙織
- 祐クン、どうして、、、
一瞬空白が出来たその時に、紫色のボンテージウェアに身を包んだアズサムラサキ登場。
- アズサムラサキ
- ぎゅぃーららー。長瀬祐介、セイトカイの秘密基地まで来てもらうわよ。やや、さおりん!ちょうど良いわ、命令にはないけど、ついでに貴様もやっつけてあげるわ!
- 瑠璃子
- (無表情だが不快さが伝わるように)人質ですって?…そんな事はわたしがさせない。
- アズサムラサキ
- なんだと?!
アズサムラサキ、宙に浮いて攻撃を仕掛ける。瑠璃子はスカートをたくし上げると、スカートの下のホルスターに隠して持っていた剣をぬいて、アズサムラサキに投げつける。剣は、すっとアズサムラサキの胸の谷間に突き刺さる。
- アズサムラサキ
- ひ、ひぇぇぇっ!あっあぶないじゃないのっ!!(動揺して空を飛び逃げ去る)
瑠璃子はアズサムラサキを追いかける。祐介もいっしょに追いかけようとするが、沙織が祐介の袖を捕らえる。すがるような視線で止められたため、祐介は追いかけるのをあきらめる。
「場面転換」人気のない裏庭。アズサムラサキが逃げ込んでくる。しかし、物陰には既に瑠璃子が先回りして待っていた。
- アズサムラサキ
- あ、あんた、なんて事するの!セイトカイの作戦の邪魔をするって云うの??
瑠璃子はアズサムラサキに近寄る。おびえるアズサムラサキの胸元からナイフを引き抜く。その時、ウェアの胸元の紐をぷつぷつと切ると、アズサムラサキの豊かな胸があらわとなる。
- アズサムラサキ
- (真っ赤になって、慌てて胸元を手で隠して)きゃぁぁぁっ!
- ナレーション
- 皆様にお見せ出来ないのが残念である。
- アズサムラサキ
- 余計な事云わないの!(蹴りを入れる)
- 瑠璃子
- 帰ってプロフェッサーツキシマに伝えて…余計な事、しないでって。
- アズサムラサキ
- (怒りと屈辱にぶるぶると震えながら)お、覚えてらっしゃいっ!!
と、アズサムラサキは飛び去る。
瑠璃子が見透かしたように微笑んだところでアイキャッチが入る。
ちゃらっちゃー、ちゃちゃっ!
人造人間さおりん
〜コマーシャル〜
(Bパートへ)