ちゃらっちゃー、ちゃちゃっ!
人造人間さおりん
一面に立ち込める煙がようやくおさまってくる。爆音に驚いた生徒達が駆けつけてくる。爆発によって落ちてきた天井のブロック破片ががれきの山を作っており、その周りを遠巻きに生徒達が取り囲む。
野次馬生徒達の一列目には、満足そうに微笑んでいる楓と悲しげな表情をした初音がいる。
- 男子生徒A
- (初音に向かって)おい、一体何があったんだよ?
- 男子生徒B
- だれか下敷きになってんじゃねぇのか?
- 初音
- (答えに窮して)あ、あの、、
とその時、がらがらと音を立ててがれきが崩れ落ち、下から人影が現われる。どよめく生徒達。よろよろ、と肩を押さえながら出てきたのが沙織である事が分かる。舌打ちする楓。
- 女子生徒A
- (沙織に歩み寄って)さ、沙織、大丈夫なの?(ほとんど怪我らしい怪我をしていない沙織を不審がる表情)
- 沙織
- ありがとう。なんか、助かったのが嘘みたい(苦笑いを浮かべる)
- 千鶴
- (遠くから声だけ)どうしたの、一体!
廊下の向こう側から、スリッパのぱたぱたという音とともに、白衣の千鶴登場。
- 女子生徒A
- 先生、急に爆発があって、新城さんが下敷きに、、、
- 千鶴
- えっ?(近くにいる楓を振り向く。悔しそうにかぶりを振る楓。眉間にしわを寄せ、沙織の傍らに膝をつく)大丈夫なの?新城さん。
- 沙織
- (困った表情で)え、ええ。どうやって助かったのかよくわかんないんですけど、、
- 千鶴
- (やさしい微笑み。しかし目は笑っていない)気になるわ。ちょっと、見せてごらんなさい。
- 沙織
- (千鶴にがっしりと手を取られ、青ざめる)だ、大丈夫ですってば。
沙織の言葉におかまいなく、肩をぐいと握り締める千鶴。沙織、たまらず悲鳴を上げる。
- 千鶴
- (にやりと)ここが怪我しているようだわ(といいながら、沙織の制服の胸元を弛めて肩をはだけさせる)
- 沙織
- や、やめてぇっ!
- 千鶴
- (芝居がかって大仰な声で)な、何なのこれはっ!!
はだけた沙織の肩口はぱっくりを割れていて、中のメカがむき出しになって見えている。千鶴はわざと生徒達に見え易いように沙織の傷口をさらす。ざわつく生徒達。
- 沙織
- (さぁっと青ざめる)(独白)しまった、るりるりとの対決の時に受けた傷を応急処置しただけだったから!
- 千鶴
- (勝ち誇った表情)新城さん!あなたロボットだったのね!
生徒達、口々に驚きの言葉を口にする。次第に怒りに言葉へと変わってゆく。
- 女子生徒A
- (涙を浮かべて)信じられない!沙織、今まで私たちのこと騙してきただなんて!
- 沙織
- (はっと息を呑む)だ、騙してた訳じゃないわ。
- 男子生徒A
- だまれよ!ロボットのくせに、人間の振りしておれたちの中に入り込もうだなんて、とんでもない奴だぜ!
口をわなわなと震わせる沙織。ショックに言葉が出ない。生徒達になじられる沙織を見て満足そうな表情を浮かべる楓と千鶴。おろおろする初音。
- 千鶴
- (冷たい表情)あなた、私たちの学校を壊しに来たセイトカイのアンドロイドね!
- 沙織
- ち、ちがうわ!あたしはセイトカイの手先なんかじゃない!
- 千鶴
- (ぴしゃりと)うそおっしゃい!今、セイトカイ以外がこんなに精巧なロボットを作れるものですか!あなたはセイトカイの殺人ロボットなのね!
- 沙織
- (激しくかぶりを振りながら)違う違う!あたしは、あたしは、、、
とその時、沙織の視線の先に祐介がいる事が分かる。ぱっと表情が明るくなる沙織。
- 沙織
- 祐クン、、、長瀬君なら証明してくれるわ、あたしがセイトカイのロボットなんかじゃないって事を!
全員の視線が祐介に注がれる。露骨に迷惑そうな表情をする祐介。すがるような沙織の表情をみて、ため息をつく。
- 祐介
- (けだるげな表情で)ああ、新城さんはセイトカイのロボットなんかじゃないよ。
(キッと表情を荒げて)そいつは人間とHするために作られたただの淫乱ロボットさ。だって、こいつは僕に無理Hしようとしたんだから!生徒達、驚きのどよめき。女子生徒達は嫌悪の視線を沙織に浴びせる。
- 沙織
- (ショックで動転し、目を大きく見開く。かすれた小さな声で)ゆ、祐クン、、、
「場面転換」
保健室。暗幕を降ろした暗闇の中。正体をさらしたハツネグレイ、赤地雷カエデ、白骨チヅルが潜む。
ハツネグレイ:灰色のレオタードにたぶたぶのレッグウォーマー。ポイントはピンク色のチョーカー。
赤地雷カエデ:シックな感じの赤いワンピース。丈は膝元まで。腰にはショッカー戦闘員を思わせる大柄なバックルのベルトをしている。頭には蛙の目をデフォルメしたかぶりモノ。
白骨チヅル:スレンダーな体型にフィットした白のノースリーブス。白のジーンズ。足元は白のハイヒール。肘まである長い白の手袋をしている。
- 白骨チヅル
- 思わぬ形でさおりんを追いつめる事が出来たわ。長瀬祐介から見放されて、さおりんは完全に孤立している。今こそチャンスよ。
- 赤地雷カエデ
- …これも、アズサ姉さんのおかげ。
- 白骨チヅル
- (ふぅ、と息をはいて天井を見上げる)そうね、アズサがさおりんのふきふき回路を解放してくれたから、、、。
アズサの心に答えるためにも、何としてもさおりんを倒さなくては!(くっと表情を引き締める)ハツネグレイ、二人の会話も聞かずぼんやりと足元を眺めている。心なしか疲れた表情をしている。
- 白骨チヅル
- (心配そうに)ハツネ、どうしたの?元気ないわね。どこかの回路の調子でも悪いの?
- ハツネグレイ
- (無理に笑顔を作って)ううん、なんでもないよ。
- 白骨チヅル
- 全校気○い作戦まであまり時間はないのよ。しっかりなさい、ハツネ。
- ハツネグレイ
- (元気なく)う、うん、、、
- 赤地雷カエデ
- (冷たい視線)ハツネは、さおりんのことが気がかりなの。
- 白骨チヅル
- なんですって??
- ハツネグレイ
- そ、そんなことないよ!
- 赤地雷カエデ
- …さっき、爆弾でさおりんのことをがれきの下敷きにした時も、さおりんの事を心配してた。チヅル姉さんがさおりんの正体をばらした時も、、、
- 白骨チヅル
- (先ほどまでのやさしい表情は消え失せる。感情が読み取れない無表情へと変わる)ハツネ、今のカエデの言葉は本当のこと?
- ハツネグレイ
- (力無く)ち、ちがうよ、、さおりんのことなんか、私別に、、、
白骨チヅル、荒々しく立ち上がる。手袋の指先を割いて鋭利な刃物のように長い爪が伸びる。スナップをきかせたすばやい腕の振りで、保健室にあるベッドの鉄パイプを一刀両断する。
- 白骨チヅル
- (努めて怒りを押さえようとしながら)ハツネ、あなたはアヅサがさおりんに倒された事が悔しくないの?悲しくないの?固い愛で結ばれた私たちの同胞(きょうだい)を殺されてしまって、、、
- ハツネグレイ
- (けなげに)かなしいよ!
もちろん、、、、さびしいよ、、、元気で明るかったアズサお姉ちゃんがいなくなっちゃって、、、- 白骨チヅル
- だったら、なぜさおりんのことなんか!(どん、と壁を叩く)
と、その時保健室入り口の電子ロックが壊れ、ドアが開く。さっと身構える三人。入ってきたのはるりるりだった。
- るりるり
- (ぼうっとした表情)、、、仲のいいことね。三人そろって姉妹喧嘩?
- 白骨チヅル
- (敵意を奥に秘め、低い声で)るりるり、、、どうやってここに、、、
- るりるり
- (白骨チヅルの声など耳にはいらない風情)警告に来たの。
- 白骨チヅル
- (るりるりの言葉を鼻で笑う)警告ですって?プロフェッサーツキシマの命令を遂行している私たちにむかって、なんてことを。プロフェッサーツキシマに逆らうって云うの?
- るりるり
- …わたしは、あなたたちみたいに、命令通りに動く低能ロボットとは違うわ。
- 白骨チヅル
- (かぁっと怒りが顔中に広がる)なんですってぇっ!(爪を構える)
白骨チヅル、爪を水平に薙ぐ。るりるり、軽くジャンプして白骨チヅルの攻撃をかわしながら、スカートをたくし上げてるりるりショットを抜く。
- るりるり
- いいこと、さおりんは私の獲物よ。勝手な事をされると不愉快なの…
- 赤地雷カエデ
- …そちらこそ勝手な事を
赤地雷カエデ、手裏剣をるりるりに投げつける。るりるり、側転でにげながら、るりるりショットを放つ。保険室内に白煙が立ち込める。煙が収まった頃には、るりるりの姿は消えている。
- 白骨チヅル
- るりるり、私たちの邪魔はさせないわ!
ハツネ!猶予はないわ。あいつより先にさおりんを倒してアズサの敵を討つのよ!- ハツネグレイ
- (自信なさげに)う、うん、、、、
ハツネグレイの自信の無い様子に、不安な表情を浮かべるカエデのバストショットで、このシーン終わり。
「場面転換」
朝の教室。いつもの朝とは打って変わって、小声でひそひそと話し合う生徒達。言葉の端端に「沙織」や「ロボット」という単語が聞こえる。
からり、と教室の開き戸を開けて沙織が教室に入ってくると、ぴたりと会話が止む。誰とも視線を合わせず、視線を足元に向けたまま席に付く沙織。教室内は一言も言葉が交わされず、ぴりぴりとした緊張感に包まれている。
- 男子生徒B
- (緊張に耐え切れず叫ぶ)ロボット!
生徒の声を合図としたかのように、生徒達は一斉に敵意の視線を沙織に向ける。
膝の上に置いた手をきゅっと握り締め、唇をかむ沙織。
それまで教室内に立ち込めていた緊張が解き放たれ、生徒達はひそひそと、沙織を中傷する言葉を吐く。
授業が始まる。生徒達は授業に集中できず、ちらちらと沙織のことを珍しい動物であるかように見ている。
- 教師
- では、この問題が解ける人は?
しん、と静まり返る教室。生徒の視線は沙織に集まる。
- 女子生徒B
- (底意地の悪い声)新城さんならどんな問題でも答えられるんじゃないの?なんてったって、ロボットさんなんですもんね。
- 女子生徒C
- そうよ!コンピュータなら、こんな簡単な問題、すぐに解けるんでしょ?
教室が騒然とする。あたふたとする教師。
生徒達の憎悪を一身に浴びて、沙織は頭を抱えてかぶりを振る。
- 沙織
- あたしは、、あたしはっ!
沙織、たまらず席を立つと教室から飛び出してゆく。
「場面転換」
放課後。体育館では女子バレー部の練習が始まっている。
そこへ、練習着に着替えた沙織が現われると、体育館内に気まずい雰囲気が流れる。
- 沙織
- (ばつの悪そうな表情で)ごめんなさい、遅れちゃって、、
- 女子バレー部員A
- (敵意むき出しの表情)何しに来たの?
- 女子バレー部員B
- ここは人間のバレー部なのよ!ロボットなんかの来るところじゃないわ!
- 沙織
- そ、そんな、、、
女子バレー部員A、手に持っているバレーボールを沙織の顔面にぶつける。あまりの行為に、尻餅をついたまま言葉が出ない沙織。
- 女子バレー部員A
- あたしはあんたの才能がうらやましかった。どうやったらあんなにものすごいアタックが出来るのかって、いつも見つめていたわ。
でも、そんなことなんの不思議でも無かったんだわ。あんたロボットなんだもん。だれもレシーブできないようなアタックを、疲れも見せずに打ち続ける事なんで、どうってことないんでしょっ?- 女子バレー部員B
- あたしたちは、一生懸命練習したから強くなる事が出来たわ。厳しい練習に堪えたからこそ、今の力を手にする事が出来たの。
でも、あんたはちがうわ。ロボットは、はじめから何の努力もなしに才能を、能力を手にする事が出来るんだもの!- 女子バレー部員A
- あんたみたいなロボットが、あたしたちの中にいるのは迷惑なのよ! 何もしないで才能を手にする事が出来る奴が、なんであたしたちの中にいようとするのよっ!
- 沙織
- (尻餅の姿勢から立ち膝になって)ちがう、ちがうわ!
みんなにあたしがロボットだって事、黙っていたのは悪かったって思ってるわ。
(切なそうに)でも、あたしはこの学校ではロボットとしてじゃなくて、普通の女の子として暮らしていたかったの、、- 女子バレー部員A
- 勝手な事云って!
- 沙織
- あたしは、みんなが思っているようなロボットじゃないの。
バレーの能力なんてもってなかったわ。あたしだって、みんなと同じように練習しなくちゃ強くなれないし、試合をすれば、みんなと同じように疲れるるし、、
- 女子バレー部員B
- (沙織の言葉を突き放すように)そんな事、信じられないわ。
- 沙織
- (うつむきながら)あたしがロボットだって事は、みんなの事騙していたけど、、、
(さっと、頭をあげ正面を見据えて)でも、バレー部員としての新城沙織はやましい事なんか何もしてないわ!信じて!沙織にあからさまに敵意を向ける部員がいる中、申し分けなさそうな表情をする部員たちもいる。沙織を助けたいが、進んで何かをしようとは出来ない部員たち。
- 女子バレー部キャプテン
- (沙織の肩にぽんと手を置いて。申し分けなさそうに)沙織、みんなの心が一つになるまで、部活動に出てこないで、、悪いけど、、、
- 沙織
- (納得行かない表情)キャプテン!
- 女子バレー部員A
- もう、ずっとこなくっていいわよ!
後ろへ、よろけるように一歩二歩と後ずさりする沙織。じわっと涙がにじむ。きびすを返すと駆け足で体育館から走り去ってゆく。
廊下を飛ぶように走ってゆく沙織。
- 沙織
- (独白。走りながら)どうして!どうしてなの!
ロボットって事が分かっただけで、どうしてみんな急にこんなに冷たくなっちゃうの!
あたし、みんなの事友達だって、仲間だって思ってたのに!
(涙をぬぐいながら)勉強なんてそんなに出来ないよ!バレーだって練習しなくちゃうまくなれないよ!
沙織でいる時は、みんなと同じ普通の女の子なのに、どうしてっ!沙織、屋上へと駆けてゆく。屋上に人はなく、傾いた夕日が屋上を赤く照らしている。
沙織、両手をついて座り込み、堰を切ったように泣き出す。授業中からこらえていたものが一気に溢れ出す。
- 沙織
- あたしは、、あたしはいったい何なの?結局、ふきふき回路をもったロボットに過ぎないの?
あたしの心は人間と同じ、、、あたしの祐クンへの思いも人間と同じ、、、
ふきふき回路をもった、ただのロボットならこんな思いなんていらないはずなのに、、、でも、この大切な思いがあるから、あたしは今のあたしでいられるの、、、
(空に向かって)あたしは、あたしはふきふき回路の為だけに作られたロボットじゃないわ!沙織の背後のドアががちゃり、と開くと、粗暴な顔をした男子生徒が4人入ってくる。
- 男子生徒1
- お、こんなところにいやがったぜ(ニヤけた表情)。
- 男子生徒2
- あちこち探したぜ。面倒かけやがって(舌なめずり)。
男子生徒達、沙織を取り囲む。沙織は尻餅の姿勢のまま、あとずさりする。
- 沙織
- な、何、あなたたち、、、
- 男子生徒3
- あなたたち、ときやがったぜ(品の無い笑い)。
- 男子生徒4
- 保健室の先公から聞いたぜ。お前、男とヤるために作られたロボットなんだってなぁ。
ここんところ、俺達女とヤってねぇから溜まっちまってよ。- 男子生徒1
- 学校にこんなに便利なものがあるとはしらなかったぜ。一発といわずにやらせてくれよ。
男子生徒達、沙織の体を押さえ込もうとする。悲鳴を上げる沙織。
- 男子生徒2
- (沙織の悲鳴に動ずるところ無く)いくらでも叫べよ。だれもロボットの事なんか助けてなんかくれないぜ。
- 男子生徒3
- うらぁっ!
布の裂ける音。沙織の体育服の胸元が裂かれ、豊かな胸があらわになる。
- 沙織
- (涙を流しながら)いやぁぁぁぁぁっ!
- 男子生徒1
- 静かにしやがれ!お前、男とヤるためだけに作られたんだろ?だったら、もっと素直にヤらせろってんだ!
男子生徒1、沙織の頬を平手で打つ。口の中が切れ、口元に血がにじむ沙織。
押し倒される沙織。男子生徒1、沙織に馬乗りになろうとする。
- 沙織
- (独白)これが、ふきふき回路をもったロボットのあるべき姿だっていうの?
(目をつぶる)このままふきふき回路を解放して、快楽の中に堕ちていってしまったら、楽になれるのかしら、、、(涙が頬を伝う)- 初音
- (声だけ。毅然とした声で)やめなさい!
男子生徒達、振り返ると屋上の入り口に初音が立っているのが分かる。怒りの表情の初音。拳を握り締め、憤然と男子生徒達をにらんでいる。
- 男子生徒2
- (小馬鹿にした表情)なんだ、てめぇ?
- 男子生徒3
- こいつと一緒にやってもらいたいのか?
一同、下卑た笑い声をあげる。しかし、初音は屈強な男4人を前に、一向にひるむ様子はない。
- 初音
- この屋上から、今すぐ出てゆきなさい!(と、ドアを指差す)
- 男子生徒4
- なんだと?このちび!
男子生徒4、初音の頭上に拳を振り上げる。その時、初音のピンと跳ね上がったくせ毛がぴくぴくと動く。そして、初音が睨み付けると男子生徒4はそれまでの威勢が突然失せてしまい、弱々しくあとずさりする。
- 初音
- 出てゆきなさいっていったのよ!
不服そうな、しかしながら初音を恐れている表情で男子生徒達は屋上から出てゆく。 初音、沙織に駆け寄る。
- 初音
- 新城先輩!大丈夫ですか!
- 沙織
- (裂けた胸元を手で覆う。弱々しい声で)え、ええ。
- 初音
- (多きく息を吐き、安堵の表情)ああ、よかった!
(くるりとドアの方を振り向いて)とんでもない奴等!- 沙織
- (涙目。弱々しく初音に感謝の笑みを浮かべる)初音ちゃんって、、、見かけによらず強いのね。びっくりしちゃった。
- 初音
- (あたふたと)え、えっと、、、あははは、夢中だったから!どうして追い払えたか私も不思議です、あははは(わざとらしい笑い声)
- 沙織
- (初音から目をそらす)初音ちゃん、、、あたしに近づかない方がいいわ。
- 初音
- 新城先輩!
- 沙織
- (自嘲ぎみに)しってるでしょ?あたし、男の人といやらしいことするために作られたロボットなの。そんなロボットと一緒にいるのなんて
- 初音
- (急に、沙織に抱きつく)やめてください!
(涙声で)やめてください、、、自分の事そんなに悪く云うのなんて、、、悲しすぎます- 沙織
- (ぼおっとした表情。空を見上げる)以前、セイトカイのロボットにこういった事があるの。アンドロイドと人間の心に違いなんて無いって。無いって信じているって。
ロボットだって胸の奥でずっと大事にしてきたものがあるわ。その大切なものは人間に作られたものなんかじゃなくって、あたしたちロボットが自分で育んだもの。人間たちに誇りを持って示す事が出来る。あたしはずっとそう思ってた。- 初音
- 思っていた、って、、、
- 沙織
- いくら心の奥に大事なものを持っていても、入っている入れ物、この体がこんなに醜いものなんだもの、、、人間の男の欲望を注ぎ込まれるためだけに作られたこの体を、入れ物を持っている限り、あたしは、、あたしのココロはっ!
沙織、初音を振りほどいて立ち上がると、ドアの方へ駆け出してゆく。
- 初音
- 新城先輩!
初音の声に、沙織の足は止まる。夕日が屋上の上に沙織の長い影を作り出す。
- 初音
- 新城先輩が、どんなどんな体を持っていても、ろ、ロボットでも、私はずっと先輩のお友達です!
沙織、初音をちらっと見る。目にきらっと光るものが見える。こくりとうなずくと、立ち止まることなく屋上から駆け去ってゆく。一人取り残される初音。
- 千鶴
- (声だけ)ずいぶんと御執心ね。
初音、はっとして後ろを振り返ると、そこには千鶴と楓の姿が。
- 初音
- (驚いて)チヅル姉さん、カエデ姉さん、いつからそこに、、、
- 千鶴
- (初音の質問を無視して)ハツネ、わかっているの?あいつはさおりんなのよ!アズサを殺した憎い仇なのよ!それをわかっているの?
- 初音
- わ、わかってるわ、、、
- 千鶴
- だったら、どうしてあいつを助けたりなんかしたの?あのまま好きなようにやらせておけば、ふきふき回路は暴走してたわ。ふきふき回路を解放してしまったさおりんを倒すなんてたやすい事。その作戦を忘れたとは云わさないわよ、ハツネ。
- 初音
- (小さな声で、不満そうに)わ、私、ああいうやり方は、、
- 千鶴
- (手を振りかぶって)ハツネっ!
ぱしん!と平手打ちの音。ハツネを打ったのはカエデだった。
- 楓
- (無表情。しかし怒りは伝わってくる)…ハツネ、さおりんに情がうつっちゃったの?たった一週間の間に、、、
- 初音
- (頬を手で押さえて)わたし、わたし、、、(悲しげな表情)
- 千鶴
- ハツネ、もう勝手な事は許さないわ。全校気○い作戦の決行も迫ってきているのよ。アズサの仇を討つために、私たち姉妹の力を、心を一つに合わせるの。いいわね!
こくり、とうなずくハツネとカエデ。しかしハツネの顔から悲しみの表情は消えない。
「場面転換」
セイトカイ秘密基地。暗闇の中、怪しげな機械の電気灯が点滅している。部屋の中央にプロフェッサーツキシマが椅子に座ってうたた寝をしている。
突如、轟音。プロフェッサーツキシマは椅子からずり落ちる。
- プロフェッサーツキシマ
- な、何事だ!すぐ原因を報告せよ!
- アンドロイドウーマンA
- プロフェッサーツキシマ!る、るりるりが
- プロフェッサーツキシマ
- (憮然とした口調で)なんだと?るりるりがどうしたというのだ?
奥の方からアンドロイドウーマンたちの悲鳴が聞こえる。銃声。銃声が止んで静かになった、と思うと壁をぶち破ってるりるりが現われる。
- プロフェッサーツキシマ
- る、るりるり、一体何のまねだ!
- るりるり
- (うつろな表情。目はプロフェッサーツキシマを映していない)それは、こちらの台詞、、、
- プロフェッサーツキシマ
- なんだと?
- るりるり
- あなたがわたしにさおりんを倒せ、と命じたのよ。さおりんは私の獲物。だれにも邪魔はさせない。
- プロフェッサーツキシマ
- (おろおろと)わ、わしはお前の事を心配して、、、
- るりるり
- (鼻で笑う)いいこと、余計な真似はしないで、、、
るりるり、足からジェット噴射。天井を突き破り飛び去ってゆく。
- プロフェッサーツキシマ
- (額に青筋。怒髪天を突く形相で大声)うぬぬぬぬうっ!瑠璃子の、瑠璃子の出来損ないなぞ、いらぬわっ!
(目が据わる)壊してやる、、、
「場面転換」
学園祭当日。正門は花でかざされており、祭りの雰囲気を醸し出している。大勢の見物客が押し寄せている。各教室が競うように出店やお化け屋敷などを出しており、廊下は肩をすり合わないと歩けないほどの賑わいになっている。
体育館入り口には、大きな立て看板があり「合唱部コンサート」と大書してある。体育館の中は、パイプ椅子がならべられており、正面舞台にはどん帳が降りている。どん帳奥から、発声練習の声が聞こえる。パイプ椅子がほとんど埋まるほど観客が入っており、今や遅しと開場を待っている。
祐介と瑠璃子が体育館に入ってくる。
- 祐介
- (嬉しそうにはしゃぎながら)瑠璃子さんから誘ってくれるなんて!瑠璃子さんは合唱が好きなの?
- 瑠璃子
- そういう訳じゃないけど、、、
- 祐介
- (能天気に)ま、いいや。今日は瑠璃子さんとデートって事だね!
中央中ほどの席に座る二人。はしゃぐ祐介とは裏腹に、瑠璃子の表情は冴えない。
- 瑠璃子
- (独白)あのハツネグレイが入り込んでいる合唱部、、、一体何を企んでいるの、、、長瀬ちゃんの事を狙って何かしかけてくるつもりなの?
(静かに目をつぶる)何がおきても、長瀬ちゃんは私が守る、、、瑠璃子、隣に座る祐介の手をそっと握る。驚く祐介。頬が紅潮し耳まで赤くなり、ためらうように、しかし最後にはしっかりと瑠璃子の手を握りかえす。
舞台裏で出番を心配そうに待つハツネ。そこへチヅル、カエダがやってくる。
- 初音
- (ぱっと明るい表情)お姉ちゃん!
- 千鶴
- いよいよ舞台ね。しっかりがんばるのよ。
- 初音
- (表情が暗くなる)う、うん、、、
- 千鶴
- (やさしく笑いかけ、ハツネを元気付ける)しっかりなさい。大丈夫、ハツネならちゃんと最後まで間違わずに出来るわ。
と、その時アナウンスがコンサート開始を告げ、照明が落ちる。正面のどん帳が上がり、舞台に上がっている合唱部が見える。観客は拍手で合唱部登場を迎える。
コンサート開始に合わせるように、体育館入り口に沙織登場。柱に隠れるように舞台を覗き見する。
- 沙織
- (開場に、瑠璃子と寄り添う祐介を見つけて、悲しそうに)祐クン、、、(うつむく)
瑠璃子、目の端に沙織を見つけ、くすりと笑う。
コンサート一曲目が始まる。
- 瑠璃子
- (独白)一体どこで仕掛けてくるの、、、ハツネグレイのねらいは一体何?(祐介の手をきゅっと握り締める)
数曲、特に何事も無く演奏される。すばらしい合唱に、一曲終るごとに拍手が大きくなってゆく。沙織も、つかのま悲しみを忘れて拍手をおくる。
- 沙織
- (いつもの明るい沙織の表情に戻って)すごい、初音ちゃんスゴイよ!
舞台裏。暗い舞台裏の部屋で、怪しげな装置の前に座るチヅルとカエデ。装置ディスプレイの光に、二人の顔が不気味に照らし出される。
いつしか曲は「流浪の民」に変わっている。
- 千鶴
- ふふっ、何も知らずに馬鹿な人間たち、、、行くわよ!マッドサイクル発振!
- 楓
- …(スイッチをがちり、と押す)
舞台上、初音のぴんと跳ね上がったくせ毛がぴくぴくと動くと、きーんという音が体育館中にハウリングのように響き渡る。観客と合唱部員達は耳を両手で押さえて苦しがる。
- 瑠璃子
- (がたり、と席を立つ。呆然と)こ、これは、、、
- 祐介
- (瑠璃子の手にすがり付く。目を血走らせ、よだれをだらしなくたらしながら苦悶の表情)る、瑠璃子さん助けて、、、
精神の臨界点を越え、人間たちは狂暴化しだす。殴り合い、噛み付き合いをはじめ、体育館は一転阿鼻叫喚地獄と化す。
- 千鶴
- みてごらんなさいカエデ、人間が獣のよう!人間なんて所詮は理性の皮をはがしたら、見にくい獣なのよ(婉然と笑う)。
- 楓
- …(表情は変わらないが、笑っている事は分かる様に)
と、そこへ沙織が乗り込んでくる。
- 沙織
- みんなを変にしている電波を出しているのは、ここねっ!
- 千鶴
- (驚愕の表情)さ、さおりん!どうしてここが!
- ナレーション
- 沙織は超聴覚でマッドサイクルを聞き分け、発信源を突き止める事が出来たのだ。
沙織とチヅル・カエデが立ち回り。チヅルの一瞬の隙をついて、沙織の蹴りがマッドサイクル発生装置の横腹に入る。ばしばしっと火花が飛び散る。
- 千鶴
- な、なんてことを!精密機械なのよ、気を付けなさい!
- 楓
- …さおりんをやっつけちゃって!
楓の声にアンドロイドウーマンが湧いて出てくる。くちぐちに「ツキシマ」「ツキシマ」と奇声を発する。アンドロイドウーマンをかわしながら、舞台裏から逃れ出る沙織。
沙織が舞台に飛び出してくると、それまで争っていた人間たちが、ぐったりと床に倒れ伏しているのが分かる。ほっと安堵のため息を付く沙織。
- 沙織
- (体育館内の人たちに向かって、大声で)みなさん!みなさんはセイトカイのロボットに狙われています!安全な場所に逃げてください!
- 観客の女子生徒
- (額を押さえながら、もうろうとした表情で)し、新城さん?
沙織、アンドロイドウーマンに取り囲まれる。アンドロイドウーマンを見て恐慌状態になる観客たち。悲鳴、怒号が飛び交う。
- 祐介
- (大声で毅然と)みなさん!落着いてください!出口は向こうです!押し合わないで!(観客に避難を指示する)
- 沙織
- (舞台上。怒りの表情)初音ちゃん、さっき変な電波が出ていた時、あなたのその髪の毛が反応していたわ。あなた、セイトカイのロボットだったのね!
- 千鶴
- (裏手から登場)そうよ、ハツネはあらゆる電波を増幅して発振する事が出来る回路を内蔵したセイトカイの戦士、ハツネグレイなのよ!
初音、一歩二歩とあとずさり。が、観念した表情を浮かべると、その姿をハツネグレイに変える。
- 沙織
- (きゅっと唇をかむ。目には怒りの炎が燃える)親切な後輩のふりをして、あたしの事をだましていたのねっ!許さない!
ちぇいんじ!すいっちおん!わん、つー、すりーっ!沙織、さおりんにチェンジ。まわりのアンドロイドウーマンを蹴散らしてハツネグレイに組み付く。
- さおりん
- みんなに危険が及ばないところに、闘いの場所を変えるわ!
足からジェット噴射。天井を突き破って体育館から飛び出してゆくさおりんとハツネグレイ。
「場面転換」
組み合ったまま宙を飛んでさおりんとハツネグレイが郊外の石切り場にやってくる。地面に激突。ごろごろと転げて、互いに上になり下になりながら攻守ところを変え、殴り合う。二人は、ぱっと離れて飛びすさり10メートルほど間合いをとる。肩で息をしながら、互いの隙を狙うさおりんとハツネグレイ。さおりんの表情はきつく、唇をぎゅっとかみしめている。ハツネグレイは困惑したような表情。
- さおりん
- (たんたんと)わたしがどうしようもなく孤独だったとき、近寄って差し出してくれたあなたの優しさがとても嬉しかった。あなたとなら友達になれる、と思った。
でも、それはわたしに近づこうとする為だったのね。あの優しさはすべて嘘だったのね!- ハツネグレイ
- (さおりんの言葉に気おされる。しかし、きっと表情をきつくするとさおりんを睨み返す)あなたは私の姉さん、アズサグレイを殺した!私は姉さんの仇を取るためならなんだってするの!
- さおりん
- (ぐっとあごを引く)アズサムラサキ!あなたはアズサムラサキの妹だというの?
- ハツネグレイ
- (涙目)どうして!どうしてセイトカイの理想世界を作る闘いの邪魔をするの?どうして姉さんを殺したのっ!
- さおりん
- わたしだって闘いたくなんかない!あなたのお姉さんとだって闘いたくなかったわ!でも、セイトカイが人間を苦しめ、世界征服の野望を捨てない限りは、みんなを守るために私は闘い続ける!(きっ、と人差し指をハツネグレイに向ける)
じりっと、一歩足を後退させるハツネグレイ。そこへ白骨チヅル・赤地雷カエデ、瑠璃子・祐介の二組が別々にやってくる。
- 白骨チヅル
- ハツネ!
- ハツネグレイ
- お姉ちゃん達、手出ししないで!これは私の闘いなんだから!
ジャンプ一閃、さおりんに襲い掛かるハツネグレイ。さおりんも応戦すべく宙を飛ぶ。空中でキック、ジャンプと肉弾戦の限りを尽くすさおりんとハツネグレイ。
空中回転し、かかと落としをさおりんに見舞うハツネグレイ。からくも頭上で腕を交差させガードするさおりん。
- ハツネグレイ
- (ぐぐっと足に力を掛けながら)どうして人間なんかを守ろうとするの!あなたも見たはずよ、人間なんて一皮むいたら汚らわしい動物なんだって事を!人間なんかに組して、アズサお姉ちゃんを殺しちゃうあんたなんか許せない!
- さおりん
- (腕に力を込めてハツネグレイの攻撃に耐える)あなたは人間の事を知らなさ過ぎるわ!人間の心の中にはとてもきれいなものがあるの!わたしにそのきれいなものを見せてくれた。私の中にもきれいなものがあるって事を教えてくれた。その人間のために、私は闘うの!
あなたも知っているはずよ、そのきれいな大切なものを。だって、そんなにお姉さんの事を大事に思ってるんですもの!- ハツネグレイ
- !
ハツネグレイ、さおりんのパワーに押し飛ばされてしまう。くるくると宙を飛ばされてゆくハツネグレイめがけてさおりんは飛んでゆく。
- 白骨チヅル
- ハツネ!
- さおりん
- ひーのーたーまー、すぱーいくっ!
ハツネグレイの脳裏に、夕日の中涙を流す沙織がフラッシュバックする。沙織の攻撃をよけないハツネグレイ。さおりん必殺の火の玉スパイク炸裂。ハツネグレイ、灰色の煙を上げて地面に落下。
落下したハツネグレイの傍らに着地するさおりん。
- さおりん
- (硬い表情)どうして、よけなかったの。
- ハツネグレイ
- あなたこそ、どうして急所をはずして、、
心地よい風が石切り場に吹く。二人の姿を、身じろぎせずに見詰め続ける4人。
そのとき、突如黒雲が立ち込め、雷が鳴りひびく。
- プロフェッサーツキシマ
- (声だけ。荒々しげな声で)セイトカイの戦士、ハツネグレイよ、いまこをその力をわしにささげるのだ!
プロフェッサーツキシマの声を聞くと、ハツネグレイの目がオレンジ色に点灯。操り人形のようにぎくしゃくと立ち上がる。唖然と成り行きを眺めるさおりん。
プロフェッサーツキシマ、セイトカイ秘密基地内で毒電波笛を吹き鳴らす。
- さおりん
- プロフェッサーツキシマ、無駄よ!さおりんにチェンジしたわたしに、そんなものは通用しない!
- ハツネグレイ
- (コンピュータの声のように平板な声で)ソウカナ、サオリン
急に、毒電波笛にビブラートが掛かったかのように聞こえる。と、頭を抱えて苦悶するさおりん。
- さおりん
- そ、そんなばかな!
- ナレーション
- プロフェッサーツキシマは、ハツネグレイの電波増幅回路をリモートコントロールであやつり、自分の毒電波笛のパワーを3000倍に増幅した。さしものさおりんも、3000倍の毒電波笛の前ではふきふき回路をさいなまれてしまうのだ!
- プロフェッサーツキシマ
- さおりんよ、己の目の前を見るがよい。長瀬祐介の傍らにいる女を。その女がお前のいとしい長瀬祐介を奪ったのだ。
その女を殺せ!そして、そのあとで思う存分に長瀬祐介と交接(まぐわ)うがよい、ふはははははさおりん、目が据わり瑠璃子にじりじりっとにじり寄る。
- 祐介
- (瑠璃子をかばうようにさおりんの前に立ちはだかって)さ、沙織ちゃん、いったい何の真似だ!瑠璃子さんには手出しさせないぞ!
- 瑠璃子
- (嬉しそうに)さおりん、やっと自分から私と闘う気になったのね(祐介を押しのける)。
- 祐介
- (瑠璃子の行動に驚いて)る、瑠璃子さん、、、
瑠璃子、スカートをたくし上げるとスカート下のホルスターから毒電波剣を抜き出す。くるくる、と何回かナイフを回し顔の前に毒電波剣をかざし、るりるりにチェンジする。
- 祐介
- (驚愕)る、瑠璃子さん、君はっ!
- るりるり
- (婉然と)これが私の正体、、、驚いた、長瀬ちゃん?
- 祐介
- き、君は今まで僕の事を騙していたのかい?
- るりるり
- 騙してなんかないよ、、、長瀬ちゃんなら本当の事をみんな知っているはず、、
祐介の困惑をよそに、るりるりとさおりんは対峙する。風が二人の闘いの場に砂煙を巻き上げる。
さおりん、戦端を切って回転回し蹴り連打。軽くガードするるりるり。るりるり、さおりんの一瞬の隙きをついてサマーソルトキック。あごを蹴られて尻餅をつくさおりん。るりるり、そこへ飛び掛かり馬乗りになって、るりるりショットの銃身でさおりんの顔を殴打する。
- 祐介
- やめて!やめてくれ!どうして二人が闘い合わなくちゃいけないんだ!ふたりは長瀬博士が作った姉妹なんだろっ!
祐介の叫びは二人には届かない。るりるり、さおりんの首をつかんでネックハンギング。そして、宙へ放り投げる。そこへジャンプ一閃、首をレッグシザース。
- るりるり
- …ギロチン落とし!
だが、さおりんはるりるりがギロチン落としをかける前に首からるりるりの足首を引き剥がして力任せに放り投げる。岩盤に叩きふせられるるりるり。
- るりるり
- うぐ、、やっと本気になった?(口元を歪ませる)
二人の戦いは続く。
- 祐介
- どうして、、、どうしてこんなことに、、、
(目に、さおりんを操っているハツネグレイが映る)そうか、あいつが沙織ちゃんを操るのを止めさえすれば、、、でもどうやって、、、さおりんの動きに合わせて、ハツネグレイのくせ毛がぴくぴく動くのに気が付く祐介。
- 祐介
- それかっ!
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!(ハツネグレイに向かって突進)祐介、胸ポケットからはさみを取り出す。白骨チヅル、赤地雷カエデが気が付くより早くハツネグレイに組み付くと、電光石火の早業でハツネグレイのぴんと跳ね上がったくせ毛を切り捨てる。
- ナレーション
- 祐介の機転が、プロフェッサーツキシマの毒電波笛からハツネグレイとさおりんを解放した!
ハツネグレイ、解放され膝から地面に倒れ込む。駆け寄る白骨チヅル・赤地雷カエデ。
さおりん、正気を取り戻す。頭痛を追い払うように頭を振るさおりん。
- さおりん
- (もうろうと)わ、私は一体何を、、、
- るりるり
- どうしたの、さおりん。さっきまでの勢いはどこへ行ったの?
- さおりん
- る、るりるり!どうしてあなたが、、、
いえ、そんなことどうでもいいわ。わたしはあなたとは闘えない、、、- るりるり
- 何をいまさら、、、
さおりん、側転でるりるりの攻撃を避けながら逃げようとする。
- るりるり
- 逃げるなら撃つといったはずよ、、、、
るりるり、スカート下からるりるりショットを抜き出すとさおりんめがけて乱射。さおりん、膝に銃弾をを受けて倒れる。
- さおりん
- (膝を押さえてうめきながら)ううっ、、、
- るりるり
- (銃口をさおりんに合わせる)さようなら、、、さおりん
- 祐介
- (絶叫)や、やめろおーっ!
銃声。驚愕の表情のさおりん。駆け寄ったハツネグレイがさおりんの身代わりとなってるりるりショットを受けたのだ。
- ハツネグレイ
- ううっ(倒れ伏す)
- さおりん
- ど、どうして!
ハツネグレイの行動を理解できずショックを受けて一歩も動けない白骨チヅル、赤地雷カエデ。呆然とハツネグレイを見る、るりるり。
- 祐介
- (涙目)な、なんてことを、、、
瑠璃子さん、僕は君のことをやさしい人だって思ってた。今だってそう思ってるよ。
でも、でもどうしてこんなことをするんだい。どうして沙織ちゃんを倒そうとするんだい。優しい女の子だったらそんな事しないよ。
僕の瑠璃子さんならそんな事は絶対にしないよっ!!!- るりるり
- (祐介の絶叫にたじろぐ)な、長瀬ちゃん、、、
じっとるりるりを睨み付ける祐介。
- るりるり
- (無表情なるりるりが、明らかに悲しい表情を浮かべる)、、、早く気が付いて長瀬ちゃん、、、そうすれば私の事を分かってくれるはず、、、
たっと走り去る、るりるり。
傷ついて、さおりんの腕に抱かれているハツネグレイが気がつく。
- ハツネグレイ
- ううっ、、、し、新城先輩、、、
- さおりん
- (べそをかきながら)初音ちゃん、、、どうしてこんなことを、、、
- ハツネグレイ
- (泣き笑い)おかしいよね、新城先輩はアズサお姉ちゃんの仇で、憎くて憎くて、殺したくて殺したくて仕方ない相手なのに、かばっちゃうなんて
- さおりん
- もう、しゃべらないで、あなたの体は、、、
- ハツネグレイ
- だめだよ、新城先輩のこと、やっつける事なんて出来ないよ、、、だって新城先輩はいつも悲しそうにしてて、寂しそうにしてて、泣き虫で、、、そんな人のこと、うっ!(苦痛に顔を歪める)
- さおりん
- (涙が頬を伝い、ハツネグレイの頬に落ちる)初音ちゃん、、、
- ハツネグレイ
- (苦痛に喘ぎながら)わ、私、新城先輩の本当のお友達になりたかった、、、
- さおりん
- あなたは、あたしの大事なお友達よ、初音ちゃん
- ハツネグレイ
- 嬉しい、、、ありがとう、新城先輩(苦痛の下、やっとの微笑み)
ぱっとさおりんの腕から飛び出して駆け出す。さおりん達から十分離れたところまで走り去ると、ハツネグレイは爆発する。
- さおりん
- (絶叫)初音ちゃーんっ!
がくり、と地面に突っ伏すさおりん。地面にハツネグレイの部品がからからと振ってくる。さおりんの手元にハツネグレイの歯車が転がってくる。さおりん、いとおしげに歯車を拾おうとする。が、そのさおりんの手を白いハイヒールが踏みしめる。白骨チヅルである。
- 白骨チヅル
- 汚らしい手でハツネに触らないで!
- 赤地雷カエデ
- …(怒りの表情で、さおりんが拾おうとした歯車を手に取る)
- 白骨チヅル
- 今日のところは引き上げてあげる、、、私たち姉妹は恨みを忘れない。この次合う時はあなたの最後よ、さおりん!
砂煙の中、二人の姿は消える。
- さおりん
- どうして、どうして私たちは憎しみ合わなくちゃいけないの?どうしていつくしみ会う事が出来ないの?
私たちがロボットだから?闘うために作られた人形だから?
でも!人形にも心がある!愛があるのよ!夕日に向かって叫ぶさおりん。祐介はさおりんの傍らに立ち尽くすほかすべはない。
- ナレーション
- プロフェッサーツキシマの作り出す残酷な運命を呪うさおりん。泣くなさおりん。闘えさおりん、地球に平和の日が来るまで。
〜 エンディング 〜
戦え!! 人造人間さおりん(うた:新城沙織、コロムビアゆりかもめ会)
♪ ぶるまのさおり〜 ぼくらのなかま
へいわをまもって きょうもゆく
どんなてきでも へいちゃらさ
ひのたまアタック ぶちかませ
セイトカイロボット やっつけろ〜 ♪
「次回予告」
生徒達にも沙織の理解者が現われ、人間とロボットの間に融和が生まれようとしていた。しかし、そのささやかな平和を壊すかのように、セイトカイの最終作戦が始動しようとしていた。セイトカイの動きを察知した沙織と祐介はセイトカイ秘密基地へ乗り込んでゆくが、そこには復讐に燃える赤地雷カエデが待ち伏せていた!
次回、「変身不能!? るりるり大反逆」に御期待ください!