さおりんこと新城沙織は、ふきふき回路を心に持つアンドロイドである。
プロフェッサーツキシマ「この毒電波砲さえ完成すれば、世界は一挙に我がセイトカイのものとなるのだ」 著:Yu.N、挿絵/オープニング/エンディング作詞:sugich |
〜 オープニング 〜
ゴーゴー・さおりん(うた:新城沙織、コロムビアゆりかもめ会)
♪ スゥィッチ〜オン ワン ツー スリー
でんりゅうひばなが あたまをはしるぅ
さおりん チェィンジ あかブルマ〜
セイトカイロボット むかえうて
じんぞうにんげん さおりん〜
チェインジ チェインジ
ごぅごごぅごぅ ごごっごー!! ♪
ちゃかちゃかかーん ちゃっちゃっ
第42話 変身不能!? るりるり大反逆
じゃーん
祐介たちが通う学校。卒業式が近づき、春らしい陽気が学園にも広がっている。
- ナレーション
- いつもと変わらぬ学園の風景。しかし、この学園の奥深くで恐るべき作戦が進行中であることを、まだ誰も気づいてはいなかった。
学園校舎裏手。ごみ捨て場や焼却炉がある人気のないところを、ぼろぼろの制服をまとった男子生徒3人が走っている。衰弱しきって走る足もおぼつかない。何かにおびえるように、後ろをちらちらと見ながら走っている。
- 囚人生徒A
- (絶え絶えの声で)に、逃げ切れたか?
- 囚人生徒B
- 連中も、ここまは追ってこれないようだな。
突如、生徒たちの前に人影が立ちふさがる。驚愕の表情の囚人生徒たち。彼らの前に立ちふさがったのは、赤地雷カエデだ。
赤地雷カエデのコスチューム:シックな感じの赤いワンピース。丈は膝元まで。腰にはショッカー戦闘員を思わせる大柄なバックルのベルトをしている。頭には蛙の目をデフォルメしたかぶりモノ。
- 赤地雷カエデ
- 逃げようとしても無駄です。おとなしくお戻りなさい。
- 囚人生徒A
- いやだ!あんなところに閉じ込められて重労働させられるなんてまっぴらだ!
- 囚人生徒B
- 食事も睡眠時間もろくに与えられないから、仲間はどんどん死んでいった!
- 囚人生徒C
- 俺達は普通の高校生なんだ。なんであんな訳の分からない工事に命をかけなきゃならないんだ!
- 赤地雷カエデ
- (冷たい、見下すような視線で)愚かな人間たち。あなたたちに私たちセイトカイの崇高な使命を話しても理解などできないでしょう。ならば、おとなしく奴隷としてその身をセイトカイにささげなさい。
- 囚人生徒A
- ふざけるなぁ!
囚人生徒A、自暴自棄の体で赤地雷カエデに突っかかって行く。ひらり、と体をかわす赤地雷カエデ。
- 赤地雷カエデ
- 身の程をわきまえぬ愚か者たち、死になさい。
赤地雷カエデ、ワンピースのミニスカートのすそを持ち上げる。頬を紅潮させはずかしげな表情を浮かべる。ぷるぷる、と震えると赤地雷カエデの股間からゴルフボール大の赤い球体が転げ落ちる。球体は生徒たちのほうへと転がって行く。
- 囚人生徒A
- な、なんだ!?
球体が生徒たちに接触すると、爆音を上げて爆発する。赤地雷カエデの必殺武器赤玉地雷だ。絶叫を上げて爆死する囚人生徒たち。生徒たちの死体を冷たい目で見下ろす赤地雷カエデ。
そこへ、アンドロイドウーマンたちを引き連れてチヅルがやってくる。
白骨チヅルのコスチューム:スレンダーな体型にフィットした白のノースリーブス。白のジーンズ。足元は白のハイヒール。肘まである長い白の手袋をしている。
- 白骨チヅル
- よくやったわ、カエデ。あやうくセイトカイの最終秘密作戦が漏洩するところだった。でも、奴隷の数が一人でも欠けると工事に支障が出てしまうこの時に、、、
(囚人生徒の死体にハイヒールで蹴りを入れる)また奴隷狩りをするしかないわね。- 赤地雷カエデ
- (赤くなってうつむいたまま)……
- 白骨チヅル
- (赤地雷カエデの様子が気になって)どうしたのカエデ?どこか調子が悪いの?
- 赤地雷カエデ
- (赤くなったまま、ふいと顔をそらす)
- 白骨チヅル
- (ふぅ、とため息をついて)また!自分の必殺技が嫌いだっていいたいんでしょう?
- 赤地雷カエデ
- (くるりと白骨チヅルの方を怒った表情で振り向く)だって…
- 白骨チヅル
- だってじゃありません。プロフェッサーツキシマがくださったすばらしい能力なんですよ。それに対して不平を云うなんてとんでもないことです。
- 赤地雷カエデ
- (悲しそうにうつむく)恥ずかしいです…
- 白骨チヅル
- (赤地雷カエデの声を無視して)さぁ、新しい奴隷どもをかき集め一刻も早く毒電波砲を完成させて、この地球をセイトカイのものにしましょう!
白骨チヅル、ぐっと、力を込めてガッツポーズ。アンドロイドウーマンたちも真似てガッツポーズを取る。赤地雷カエデも、不承不承に控えめなガッツポーズ。
- 赤地雷カエデ
- (独白)でもその前に、さおりん、おまえは必ず殺します。アズサ姉さんとハツネの仇は必ず取らさせてもらいます。
校舎内。重苦しい雰囲気が漂っている。廊下を歩きながらひそひそ話をしている女子生徒たち。
- 女子生徒A
- 昨日、また2年生の男子がいなくなっちゃったんですって。
- 女子生徒B
- 今月に入ってこれでもう50人以上でしょう。いったいどうなっちゃってるの?
- 女子生徒A
- 卒業式がもうすぐって時に、変な事件が起きちゃって。先輩の卒業をお祝いする気分じゃなくなっちゃったよ。
女子生徒たちの話をすれ違いざまに耳にする祐介と沙織。
- 祐介
- (ため息)生徒誰一人として知らないくらいの事件になっているようだね。
- 沙織
- でも、これだけの騒ぎになっているのに警察がぜんぜん動いてくれないなんて、怪しすぎるわ。家出だろうとか無責任な事云ってるみたいだけど。
- 祐介
- これはセイトカイの仕業に違いないよ。警察はセイトカイのシンパなんだ。警察もセイトカイにオルグされちゃったんだろう。
- 沙織
- お、オルグ?祐くんって一体何歳?
- 祐介
- (軽く咳払い)と、とにかくセイトカイが相手では僕らでないと事の真相は明らかにならないね。早くしないと、誘拐されてしまった人たちの命も危ないし。
じゃぁ、まずは地元住民の聞き込みからだ。行くぞゴリさん!- 沙織
- 誰がゴリさんよっ!
祐介と沙織、廊下を歩く生徒たちを片端から捕まえて、聞き込み調査を始める。祐介の質問に首を振って「知らない」と答える生徒たちばかり。
教師を捕まえて質問しようとする祐介。沙織は祐介の手を引っ張ってやめさせようとする。
- 教師
- こらぁっ!今は授業時間中だぞ、おまえたち何をやっているんだ!
脱兎のごとく逃げる祐介と沙織。
- 沙織
- もう!祐クンたら何やってんのよ!
- 祐介
- うーん、あの教師怪しい。
- 沙織
- (がくっとずっこけてしまう)!
沙織、心もとなげな表情で上目遣いに祐介を見る。祐介が沙織の視線に気づくと、ふぃっと視線をそらす沙織。
- 沙織
- (独白)あの後、祐クンは昔の祐クンに戻った。あの時の、冷たい祐クンとは別人のように…。一体どっちが本当の祐クンだっていうの?人の心ってこんなに簡単に、変わってしまうものなのかしら?
わからない…祐クン、あたしはあなたがわからない再び休み時間。廊下に生徒たちがあふれる。また性懲りもなく聞き込み調査を再開する祐介。そこへ、下卑た顔の男子生徒2人が歩み寄ってくる。
- 男子生徒A
- おい、長瀬。おまえ何だってそんなロボットとつるんでるんだよ。
- 男子生徒B
- (にやつきながら)いくら好きだからって、ダッチワイフを学校に持ち込んじゃいけねぇよな。さてはこれからさっそくお楽しみかい?
なめるような視線を沙織に向ける男子生徒たち。祐介は沙織の盾になるように、沙織を背にかばいながら男子生徒たちを睨み付ける。
- 祐介
- 沙織ちゃんは僕の大事な友達だ。ひどいことを云うのは僕が許さないぞ。
- 男子生徒A
- ロボットと友達だってよ(男子生徒Bと顔を見合わせて笑う)。
- 男子生徒B
- ロボットと人間が“お友達”なんかになれるわけなんかねぇっ!奴等は俺達の町をねらっている悪党じゃねぇか。
- 祐介
- (毅然と)違う!ロボットたちはプロフェッサーツキシマに操られているに過ぎないんだ。セイトカイを倒した後、僕たちはロボットと手を取り合って新しい町を作っていかなきゃいけない。そのためにも、人間はロボットと仲良くならなきゃいけないんだ。
- 沙織
- 祐クン…
- 男子生徒A
- おきれいな事云いやがって!(激昂して殴り掛かろうとする)
- 女子生徒の声
- やめて!
気がつくと、祐介たちは女子生徒たちの輪に囲まれていた。
- 女子生徒C
- (先ほど声を上げた女子生徒)新城さんにひどい事しないで!
- 男子生徒B
- 何だと?おまえらこいつがどんなロボットだか知っているのか?
- 女子生徒D
- しってるわ!同じ学校の勇敢な生徒よ。
- 女子生徒C
- 文化祭のときに、セイトカイが攻めてきて大変だった時、新城さんは私たちを助けてくれたわ。
- 女子生徒D
- もし、新城さんがいなかったらあんたたちだって今生きてるかどうかわからないわよ!
つめよる女子生徒たち。
- 男子生徒A
- くそっ!
女子生徒たちの気迫に押されて男子生徒A、B脱兎のごとく逃げさる。
沙織、女子生徒たちに囲まれて感謝の言葉を掛けられる。それまでの硬い表情が解けて、気恥ずかしい笑みを浮かべる沙織。
そんな沙織の様子を物陰から見つめる影。
- 瑠璃子
- あなたを受け入れることができる人間たちもいたようね。しばらくはそのかりそめの幸せに浸っているといいわ。
ふっと瑠璃子の姿が消え去ったところでカット終わり。
学園の地下に建設されたセイトカイ秘密基地。巨大な大砲のような機械を組み立てている。行方不明になっている生徒たちがこき使われている。
- ナレーション
- 悪の秘密組織セイトカイは人知れず学園の地下に秘密基地を完成させていた! 誘拐された生徒たちは、謎の秘密兵器建設のために奴隷として働かされていたのだ。
長さ1メートルほどのパイプを運んでいる生徒。苦悶の表情でよろよろと倒れる。 すかさずアンドロイドウーマンの電気むちが飛ぶ。
- 奴隷生徒D
- ぐわっ!
- アンドロイドウーマンA
- なまけるな!きりきり働け!
アンドロイドウーマン、さらに何度もむちをくれる。おびえた表情でその様を見つめているほかの奴隷生徒たち。
カット変わって、作戦室。窓から建設中の巨大兵器が見える。満足そうにそれを眺めるプロフェッサーツキシマ。
- 白骨チヅル
- プロフェッサーツキシマ!毒電波砲の建設は順調に進んでおります。予定通り卒業式には稼動可能となります。
- プロフェッサーツキシマ
- (低い声でぼそぼそと)そうか、よくやった。
- 白骨チヅル
- (云いづらそうに)問題はコントローラーのほうなのですが…
- プロフェッサーツキシマ
- (突如激昂する)ばか者!いまだに長瀬めの居所をつかめんのか!(手に持つ杖で白骨チヅルを殴打する)
(不気味なほどすごんだ表情で)毒電波砲、これこそ我がセイトカイが世界を征服するための最終兵器。卒業式を待って巨大化した毒電波を日本中に、世界中に発振させる「世界毒電波化計画」を決行するのだ。だが、毒電波砲のコントローラーの完成には長瀬博士の力がどうしても必要となる、、、
赤地雷カエデ、白骨チヅル!おまえたち二人は何としてでも長瀬めを捕まえてくるのだ。そのための手段は問わん。- 白骨チヅル
- プロフェッサーツキシマ、私たちの作戦を邪魔する愚か者がおります。今回もそやつが現れましたらいかがいたしましょうか?
- プロフェッサーツキシマ
- (下から青いライティング。不気味さを増すように)かまわん、破壊せよ。
- 白骨チヅル
- はっ!
敬礼して白骨チヅル、赤地雷カエデともに作戦室から退室。暗い部屋に一人プロフェッサーツキシマが残る。
- プロフェッサーツキシマ
- (独白)また、おまえを作り直そう、瑠璃子。そしてもう一度はじめからやり直すのだ。(ぎろりと目をむく)長瀬めを殺し、今度こそおまえの前に現れないようにしてからな。
放課後。三々五々、生徒たちは帰宅の途につく。春は近づいて来てはいるが、いまだ風は冷たい。演出上服装も注意。
沙織と祐介はいっしょに下校している。住宅地の中の道を歩いている。
- 沙織
- 結局何の手がかりも見つからなかったわね。行方不明になった生徒たちに共通項もなかったし。本当にセイトカイの仕業なのかしら?
(ため息をついて)案外ただの集団家出かも知れないわね。- 祐介
- こんな寒い時期に家出なんかするかな。
- 沙織
- (間の抜けた声)はぁ?
- 祐介
- (神妙な面持ちで)こんな時期に家出したら野宿もできない。(独り合点した表情)うん!やっぱりセイトカイの仕業だよ!
うなずく祐介を、苦虫を噛んだような表情で見る沙織。
と、その時突如銃声。沙織の足元が銃弾で跳ね上げられ、土煙が舞う。
- 祐介
- (尻餅をつく)ひぁっ!
- 沙織
- (祐介をかばうように立ちふさがる)誰!
道路に面した二階建て住宅の屋根に立っているるりるり。沙織をねらっていたるりるりショットの銃口をそらす。
- 沙織
- るりるり!性懲りもなくまた来たのね!さては、この誘拐騒動の犯人はあなたね?
- るりるり
- 誘拐?そんな下世話な作戦なんて関係ない。どうせ白骨チヅルあたりがプロフェッサーツキシマの命令でやっていること…
- 沙織
- 何ですって?
- るりるり
- 私の目的はただ一つ、長瀬ちゃんを返してもらう事。そのためにはさおりん、おまえを倒す。
- 祐介
- ぼ、僕はもう君のことは信じない!帰ってくれ!
- るりるり
- そうは行かないわ。
るりるり、ジャンプ一線二人のところへと飛び込んでくる。沙織、慌てながらも住宅地中にある空き地へと逃げ込む。空き地は住宅二軒分ほどのスペース。真ん中ほどに、土管が3本横倒しになって積んである。
- 沙織
- (土管に上って)ちぇんじ!
省略バージョン変身シーンでさおりんにチェンジ。ファイティングポーズを取る。
- るりるり
- さおりん、今日こそあなたの最後よ。
るりるり、足からジェット噴射で宙に飛ぶ。さおりんもジェット噴射で追う。宙に浮いたまま、空き地上空で組み合う二人。技も何もなく、ひたすら拳で殴り合う。
- さおりん
- るりるり!祐クンがあんな冷たい人に変わってしまったのはあなたのせいね!
- るりるり
- (侮蔑の視線を投げかける)…
- さおりん
- 祐クンを、またあんな冷たい人になんか、このわたしがさせない!
- るりるり
- (ぼそっと)泥棒猫…
- さおりん
- なんですって!
- るりるり
- 泥棒猫と云ったのよ。(珍しく声を荒げて)この淫乱ロボット、長瀬ちゃんをまどわせるな!(さおりんに組み付く)
るりるり、さおりんを土管の山へと投げ捨てる。がれきとなって崩れる土管の山。そこへすかさずるりるりショットの連射。土埃が舞い上がる。
そこへ、よろよろと駆け寄って行く祐介。
- 祐介
- (絶叫)沙織ちゃん!
るりるり、地上に降り立つと祐介の前に立ちふさがる。
- 祐介
- そこをどいてくれ!沙織ちゃんが!
- るりるり
- (悲しそうに)そんなにさおりんが大事なの?長瀬ちゃん。
- 祐介
- 僕のことを長瀬ちゃんだなんて呼ぶな!
- るりるり
- この間までは、思い出してくれそうだったのに……あの淫乱ロボットが長瀬ちゃんの心を惑わせたのね。
- 祐介
- 君の冷たい心を見てしまったからだよ!慈しみの心を持っていない女の子なんて、僕は!
- るりるり
- 持っているわ。
るりるり、祐介に歩み寄る。後ずさりする祐介だが、魅入られたように足がすくんで動かない。るりるりは祐介の顔を包むように手を添えると、額を合わせる。
- るりるり
- 長瀬ちゃんに自分で思い出してほしかったけど、
- 祐介
- (恐怖で声が震えて)や、やめてくれ
- るりるり
- 思い出させてあげる。
キーン、という音がする。すると祐介の頭の中に膨大な映像イメージの洪水が流れ込んでくる。フラッシュバックのように映像が流れる。白衣を着た瑠璃子、若い姿のプロフェッサーツキシマ、何か機械を3人いっしょに取り囲んでいる、瑠璃子の顔、瑠璃子の唇、瑠璃子の裸、瑠璃子の乳房。
- 祐介
- うわーっ!
- さおりん
- (声だけ)やめなさい!!
がれきの中からさおりん登場。るりるりにキックを浴びせて祐介を解放する。るりるり、反撃することなく飛び去る。
- るりるり
- 今日のところはこれでいいわ。あとはゆっくり思い出していって、長瀬ちゃん。
- 祐介
- (額を押さえながら)思い出すって、一体何を?
頭を抱えてへたり込む祐介。心配そうに祐介を見守るさおりん。
- さおりん
- 大丈夫?祐クン。
- 祐介
- 僕は、僕は瑠璃子さんのことを知っている、いや、知っていた!でも、どうして?わからない。あ、頭が痛い!
がくり、と倒れ伏す祐介。駆け寄るさおりんの姿でこのシーン終わる。
朝。登校風景。足元おぼつかぬ様にて学校へと向かっている祐介。
- 祐介
- (独白)昨日のあれは一体なんだったんだ。るりるりが見せたあの映像、確かに僕はあれを知っていた。見覚えがある。でも、でもどこで見たことがあると云うんだ?
(頭を振る)これも、るりるりが仕組んだ罠じゃないのか。あんな昔のことを、どうして僕が直接見たことがあるんだ。深い物思いにふけっている祐介を、突然人影ない路地へと引きずり込む黒い影。口を手でふさがれ、助けを呼ぶこともできない。
- 長瀬博士
- 落ち着け、祐介、わたしだ。
- 祐介
- お、叔父さん!
- 長瀬博士
- ふぅ、奴等には見つからなかっただろうな。
- 祐介
- (怒って)叔父さん!一体今までどこに行っていたんですか。僕は、本当に心配で心配で。セイトカイの連中に捕まってよからぬ研究をさせられているんじゃないかと。
- 長瀬博士
- (祐介の怒りを凪ぐように、のんびりと)奴等の目を誤魔化すために、日本中を放浪していたのさ。生活費を稼ぐのも大変だったよ。あれこれアルバイトしてね。銀行の警備員や漁師や公園でのスタンド売り店員とか、
- 祐介
- 叔父さん、叔父さん。
- 長瀬博士
- いかんいかん、大事なことを忘れていた。こうやって危険を承知でおまえにコンタクトをとったのは他でもない、セイトカイの最終秘密作戦のことだ。
- 祐介
- 最終秘密作戦?
- 長瀬博士
- そうだ。最近おまえの学校の生徒が行方不明になっているだろう。あれの実態はセイトカイが急いで秘密兵器を作るためにやっている奴隷狩りなのだ。
- 祐介
- 奴隷狩りだって?!
- 長瀬博士
- そうだ。奴等は恐るべき最終兵器、毒電波砲をおまえの学校の地下に建設しているのだ。
- 祐介
- ええっ!!
- 長瀬博士
- 毒電波砲は、それ一つで世界を征服することができる恐るべき兵器だ。なんとしてでも、奴等の陰謀を阻止しなければならない。そこで、お前とさおりんはこれから秘密基地にのりこむのだ。
- 祐介
- (不審な表情)乗り込むのだって、僕らだけで?
- 長瀬博士
- 他に誰がいる!今セイトカイに対抗できるのは、おまえのお父さんが残してくれたさおりんだけなのだ。
- 祐介
- (独白)なんか、いつも誤魔化されているような気がするんだけどなぁ、、、
- 白骨チヅル
- (声だけ)こんなに簡単に見つかるとはな、長瀬博士!
と、その時、上空から白骨チヅル出現。
- 白骨チヅル
- 長瀬博士、あなたにはわがセイトカイ秘密基地まで来てもらいます。
- 長瀬博士
- 毒電波砲の完成をわたしに手伝わせるつもりだろうが、そんな事はせんぞ!
- 白骨チヅル
- 毒電波砲のことをご存知なのね。では話が早いわ。
長瀬博士の手を捕らえて強引に連れ去ろうとする。祐介は白骨チヅルに組み付いて抵抗する。
- 祐介
- こいつ!(偶然、白骨チヅルの胸をわしづかみしてしまう)
- 白骨チヅル
- きゃぁぁぁぁぁぁっ!
- 祐介
- こ、この感触は、、
祐介、投げ捨てられる。
- 白骨チヅル
- あ、あなた乙女の胸をなんだと思ってるの!
- 祐介
- (打ち付けた尻をなでながら)乙女って年でもないだろうに。
- 白骨チヅル
- (能面のような感情を殺した顔に変わる)なんですって?(しゅっと鋭利な爪が30センチほど伸びる)もう一度云ってごらんなさい。
- 祐介
- ひえぇぇぇぇっっ!
危機一髪のところに沙織登場。
- 祐介
- (沙織の背に隠れて)助かったよ、沙織ちゃん。
- 沙織
- (憮然とした表情)…祐クンのエッチ。
- 祐介
- あ、あれは偶然!!
- 沙織
- (つん、とした表情で)後でくわーしくく事情をきかせてもらいますからね!
- 白骨チヅル
- こらーっ!人を無視して痴話げんかするな!
白骨チヅル、沙織に組みかかってくる。チヅルの爪攻撃をからくもかわす沙織。チヅルの爪一振りで道端の交通標識が一刀両断される。
- 白骨チヅル
- なかなかやるわね、さおりん。でもお遊びの時間は終わりよ。
- 長瀬博士
- (声だけ)助けてくれー!
ふと後ろを振り向くと、いつのまにか現れた赤地雷カエデが長瀬博士を捕らえていた。
- 祐介
- 叔父さん!
- 白骨チヅル
- それではみなさん、ごきげんよう(にこり、と笑いながら、煙幕)。
- 祐介
- 叔父さーんっ!
祐介、煙幕の中に飛び込んで行くが長瀬博士の姿はもう見当たらないない、と云うカットでAパート終わり。
ちゃらっちゃー、ちゃちゃっ!
人造人間さおりん
〜コマーシャル〜
(Bパートへ)