ちゃらっちゃー、ちゃちゃっ!

人造人間さおりん

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Aパートラストから続いて、呆然と立ち尽くす祐介と沙織のショットからカットイン。白骨チヅルによって焚かれた煙幕が薄く切れて行く。くやしげに地団太を踏む祐介。

祐介
くそっ!せっかく叔父さんに会えたって云うのに!
沙織
(長瀬博士の安否を気遣って心配そうな表情)大丈夫かしら、長瀬博士。プロフェッサーツキシマの奴、今度は博士に何をさせようって云うのかしら。
祐介
(はっと思い出す)毒電波砲!
沙織
(祐介のいきなりの言葉に軽く驚いて)え?
祐介
叔父さんが云っていたんだ。セイトカイは最終兵器毒電波砲っていうのを作っているって。最近の学校での行方不明事件はみんなその作業のための人間狩りだって云うんだ。
沙織
(直情な怒り)人間狩りですって!なんてひどいことを!
祐介
(重苦しい不安感に表情を暗くする)毒電波砲、、、きっととてつもなく恐ろしい兵器に違いない。そんな物を完成させちゃいけない!(くっときつい表情。こぶしをきつく握り締めながらを)でも、どうすればいいんだ。情報を知っていた叔父さんはセイトカイの手に落ちてしまったというのに。
沙織
(キーン、という音に眉をひそめる)えっ?何の音? (祐介の制服上着のポケットに目をやる)祐クン、ポケットに何入れてるの?変な音がするわ。
祐介
(顔をしかめて)沙織ちゃん、こんな時に名に云い出すんだい。音なんてしないよ(と、ポケットに手を入れる)。ん?

祐介、ポケットから手を出すと、手にキーホルダー大の装置を持っている。

祐介
(困惑した表情)いつのまにこんなものが。
沙織
それから音がするわ。祐クンには聞こえないの?
祐介
(うつむいていた顔をはっとあげる)そうか、これは叔父さんが!

ここに回想カットとして、白骨チヅルに襲われる中、気づかれないように長瀬博士が祐介のポケットに装置をこっそりと入れるシーンを挿入。

沙織
これ、長瀬博士の通信装置ね!
祐介
これの発信電波を追っていけば、叔父さんの居所が分かる。

祐介の手のひらに載せられた装置のアップカットでこのシーン終わり。


「場面転換」
祐介たちの通う学校地下に建設されたセイトカイ秘密基地。照明は暗く、壁一面に設置された装置のランプが怪しげに点滅している。
正面ドアが開き、白骨チヅルと赤地雷カエデに両腕を固められて長瀬博士が引っ立てられてくる。おどおどと周りを見回す長瀬博士。

長瀬博士
(卑屈な笑いを浮かべて)そ、そんなにしなくても逃げたりしないよ。

長瀬博士を冷たく見据える白骨チヅル。長瀬博士をとらまえる腕の力をぎりっと強める。悲鳴を上げて痛がる長瀬博士。

プロフェッサーツキシマ
(暗闇の中から声だけ聞こえる。低く乾いた声でゆっくりと笑う)は、は、は、は。おのれが作ったロボットにすら愛想を尽かされるとはな。

下から青白い光でライティング。作戦室中央にプロフェッサーツキシマの姿がおそろしげに浮かび上がる。白骨チヅルと赤地雷カエデは長瀬博士をプロフェッサーツシキマの前へと突き出す。よろよろ、とプロフェッサーツキシマの前によろめいて行くと、力なくへたり込む。

プロフェッサーツキシマ
(下を向いたまま、長瀬博士には一瞥もくれず)久しぶりだな、長瀬源一郎博士。
長瀬博士
(恐怖に表情が凍る)プロフェッサーツキシマ!
プロフェッサーツキシマ
おまえが、我がセイトカイから逃げ出してからの一年。おまえが持ち出したさおりんのおかげで我がセイトカイは壊滅的な打撃をこうむった。
(キッと)だが、そんな事は最早どうでもよい。この毒電波砲さえ完成すれば、世界は一挙に我がセイトカイのものとなるのだ。

プロフェッサーツキシマの言葉を受けて、作戦室の壁の一面がスライドして天井へ引き上げられる。と、その向こう側に建造中の毒電波砲がその巨大な姿を現す。
毒電波砲は、荷電粒子砲の様に長い砲身をもっている。長さ50メートル。シルバーメタリックの砲身が建造ドックの暗い照明を浴びてその巨躯をさらしている。

長瀬博士
(予想が外れた、という驚きの表情)毒電波砲、、、いつのまにここまで完成していたのだ。
プロフェッサーツキシマ
(不気味に笑いながら)ふふふ、セイトカイの実力、恐れ入ったか。
毒電波砲はあとコントローラー部の完成を待つのみだ。そこで、長瀬博士、お前の協力がどうしても必要となる。

じりっと長瀬博士ににじり寄るプロフェッサーツキシマ。と、そこへ白骨チヅルが割ってはいる。

白骨チヅル
お待ちください、プロフェッサーツシキマ!
プロフェッサーツキシマ
(怒りもあらわに)何の真似だ!白骨チヅル!

白骨チヅル、長瀬博士の手をねじりあげる。悲鳴を上げる長瀬博士の胸ポケットに手を入れ、何かを取り出す。

白骨チヅル
(長瀬博士から取り上げた物を見ながら)やはり…。プロフェッサーツキシマ、こいつ発信機など持っておりました。

プロフェッサーツキシマに発信機を示す白骨チヅル。悔しそうな表情を浮かべる長瀬博士。

白骨チヅル
こんなもの!(床に叩き付け、発信機を壊そうとする)
プロフェッサーツキシマ
待て!(長瀬博士に一瞥をくれて)それは使い道がある。

邪悪な笑みを浮かべるプロフェッサーツキシマのショットでフェイドアウト。


「場面転換」
祐介たちの通う学園の校舎内。人気のない廊下を歩いて行く祐介と沙織。夕方と云うわけでもないのに、薄暗く不気味な雰囲気が漂っている。廊下を歩いて行く二人の足音が妙に響いて聞こえる様に演出すること。
沙織の手には長瀬博士から託された発信機。発信機の反応を確認しながら、廊下を奥へ奥へと歩いて行く。

祐介
沙織ちゃん、本当にこっちのほうで良いのかい?
沙織
(真剣な表情)ええ。こっちに行けば行くほど発信機からの音が強くなって行くわ。
祐介
(あたりをきょろきょろと見回す。明らかにおびえている)このあたりって、もう何年も使われていない教室ばかりなんだよね。電気もついてないしさ。それに、みんな恐がって近寄らないんだよ。出るってうわさでさ。。
沙織
(どきっとした表情)で、出るって一体何がよ、、、
祐介
そりゃ、ゆうれ…
沙織
(子供がおびえるような表情で)やだやだ!聞きたくない!あたしが恐い話嫌いなの知ってるくせに、祐クンのバカ!(と、祐介をタコ殴りする)
祐介
あいたたたた!(唐突に)あれ?
沙織
(涙目で)何よ、誤魔化さないでよ!

祐介、歩いて行く先が壁で行き止まりになっていることに気づく。

祐介
(沙織の怒りを軽く流しつつ、首をかしげる)おかしいな。こんなところで、行き止まりだなんて。ねぇ沙織ちゃん、どう思う?
沙織
(いきなり振られて、急に言葉を返せない)ど、どう思うっていわれても。
祐介
ここんなところで行き止まりなんてどう見ても怪しいよ。絶対この向こうに隠し部屋がある。(独り合点でうんうん、とうなずく)きっとそうさ!沙織ちゃんもそう思うよね。そうだよね。
沙織
(あっけに取られて)あ、あの
祐介
よし、沙織ちゃん!この壁をどーんと壊しちゃってよ!
沙織
(おどおどと、困り果てた表情)で、でも祐クン。学校の壁を…
祐介
そんなことにかまってる場合じゃないよ!急がないと地球の平和が危ないんだ!
沙織
(深刻な表情)ち、地球の平和…。
(泣きそうな表情で)あ、あたしどうなっても知らないからね!

沙織、パンチを壁にぶち込む。もろくがらがら、と崩れる壁。そのの向こう側に、学校の校舎とは似ても似つかぬ、金属パイプが縦横に走っている怪しげな通路が現れる。

祐介
(勝ち誇って)ほーら!やっぱりセイトカイの秘密基地だ。
(戸惑う沙織の手を強引に引っ張って)さ、行くよ!叔父さんはきっとこの中に囚われているんだ!
沙織
(呆れ果てた表情)こんなことでいいのかしら。

ずんずん、と秘密基地へ通路(斜め傾斜で地下へともぐって行く)を歩いて行く二人。異様なほど静かで人の気配がしない。息をころしながら、発信機を頼りに奥へと進んで行く。
狭い通路から突如学校の体育館ほどの広さの部屋へと出る。何の装置も置かれておらず、無機質な壁だけが見える。

沙織
(怪しんで、戦闘態勢。腰をかがめて自分の体を盾にするように、祐介を自分の背後にまわす)一体ここは、、
祐介
あっ!

祐介、部屋の中央に発信機が転がっていることに気づく。

祐介
これはおじさんの?

と、その時祐介たちが入ってきた通路にシャッターが下りる。他の出口もすべてシャッターが下り、祐介たちは部屋に閉じ込められる。

沙織
(悔しそうに)しまった!

カシャっと照明がつく。わらわらと現れるアンドロイドウーマンたちに取り囲まれる祐介と沙織。白骨チヅルの高笑いが聞こえる。

白骨チヅル
(アンドロイドウーマンの人垣から現れる。後ろに控えるは赤地雷カエデ)とんだお間抜けサンたちね。本当に引っかかってくれるとは思わなかったわ。
沙織
長瀬博士はどこ!
白骨チヅル
あなたが知る必要はないわ。だって、あなたはここで死ぬんですもの!

白骨チヅルの爪が30センチほどに伸び、沙織めがけて宙を薙ぐ。

沙織
ちぇいんじ!

沙織、簡易版変身シーンでさおりんにチェンジする。
アンドロイドウーマンとの乱戦。祐介を守りながらも、ばたばたとアンドロイドウーマンたちを倒して行くさおりん。ついにアンドロイドウーマンをすべて倒す。

赤地雷カエデ
(すっと、白骨チヅルの後ろに現われて)チヅル姉さんは長瀬祐介を捕まえて。わたしはさおりんをやります。
白骨チヅル
(赤地雷カエデの自発的な言葉に驚いて)カエデ…
赤地雷カエデ
仇は、アズサ姉さんとハツネの仇はわたしがとります。

たっ、と走る赤地雷カエデ。

赤地雷カエデ
(静かな声で。しかし、怒りはひしひしと伝わってくる)さおりん、あなたの相手は私です、さおりん。
さおりん

気勢を先してさおりんに体当たりする赤地雷カエデ。小柄な体ながらも、勢いで自分より大きなさおりんを壁際まで突き飛ばす。

白骨チヅル
(驚きの表情)カエデが、カエデが怒っている。

さおりん、体勢を立て直そうとするが、宙を舞い小気味よくキックをくり出してくる赤地雷カエデの攻撃をなすすべもなく受ける。かろうじてひざをつかないで立っている。
さおりんの注意が祐介から逸れたその一瞬をついて、白骨チヅルが祐介をからめとる。

祐介
(情けない声で)さ、沙織ちゃん!
さおりん
祐クン!
赤地雷カエデ
さおりん、戦いの最中によそ見をするなんて。私を甘く見ないでください。

赤地雷カエデの飛び膝蹴りがさおりんのあごにヒットする。無様に仰向けに倒れるさおりん。そこへ、祐介の腕をがっしりと捕らえた白骨チヅルが駆け寄る。

白骨チヅル
カエデ、加勢するわ。
赤地雷カエデ
(怒りもあらわに)邪魔しないでください!こいつは私の獲物…。
チヅル姉さんは長瀬祐介をプロフェッサーツシキマのところへ。さおりんはわたし一人でも倒せます。
白骨チヅル
(心配そうに)カエデ、、、(キッと表情をあらため)分かったわ、カエデ。見事、アズサとハツネの仇をお取りなさい!

白骨チヅル、祐介を捕まえ白煙の中に消えて行く。

さおりん
ゆ、祐クン!

さおりん、倒れ伏しながらも祐介の方に手をのばす。が、その手のひらを無造作に踏みにじる赤地雷カエデ。

赤地雷カエデ
(冷たい目線)アズサ姉さんとハツネの恨み。さおりん、その無様な姿をさらしたまま、あの世に送ってあげます!
さおりん
(苦痛をこらえながら声を絞り出す)祐クンを、祐クンをあなたたちに渡したりなんかしないわ!

さおりん、渾身の力で赤地雷カエデを跳ね飛ばす。小柄な体をまりのように転がしながら、さおりんとの距離を取る赤地雷カエデ。

赤地雷カエデ
(眉を寄せて)さおりん、まだこんな力が、、、
さおりん
とおっ!

さおりん、得意の回しげり連打。軸足を交互に変えながら、鋭い蹴りを赤地雷カエデに浴びせる。

さおりん
大車輪投げ!

赤地雷カエデを捕らえて、宙をぐるぐると回転し、遠心力をつけて投げ捨てるさおりん。が、とんぼを切って、すたっと着地する赤地雷カエデ。10メートルほどの距離をおいて相対峙する二人。

赤地雷カエデ
(唇を噛む)これだけは使いたくなかったのに…

赤地雷カエデ、赤いワンピースのスカートすそをひざ上20センチまで持ち上げる。頬を赤らめ、小刻みにぷるぷる、と震える。と、股間から赤玉地雷が転がり出す。赤玉地雷は意志を持っているかのようにさおりんに迫る。

さおりん
な、なにこれ!

さおりんの足にかすると、赤玉地雷、轟音をあげて炸裂。

赤地雷カエデ
(頬を紅潮させて)さおりん、もうにげられません…

赤玉地雷の攻撃をを側転しながらよけるさおりん。赤地雷カエデ、喜悦の表情を浮かべ赤玉地雷を繰り出す。

さおりん
大回転アタック!

空中一回転して、空中胴締め落しをみまうさおりん。赤地雷カエデに馬乗りになる。

さおりん
あっ!

さおりん、赤地雷カエデの股間から秘液があふれていることに気づく。

さおりん
あ、あなたにもふきふき回路が!
赤地雷カエデ
(顔を手で覆いながら)み、見ないでください!

羞恥心のあまり戦闘意欲を失ってしまう赤地雷カエデ。赤地雷カエデは戦いを忘れて泣きむせぶ。さおりん、赤地雷カエデの上から降りると、赤地雷カエデの傍らにひざをついて見守る。

さおりん
(優しさにあふれた表情で)あなたもふきふき回路に苦しめられていたのね。かわいそうに、、、
(さおりん、どこからともなくハンカチを取り出すと、赤地雷カエデのとめどなくあふれる秘液を拭きぬぐう)
赤地雷カエデ
い、いや!やめてください!

羞恥心が極まって失禁してしまう赤地雷カエデ。そんな赤地雷カエデに優しい言葉をかけるさおりん。

さおりん
あなたの苦しみはよくわかるわ。何のためにこんな回路がついているのかって、わたしもいつも悩みつづけていたわ。
赤地雷カエデ、こんな無意味な戦いは止めましょう。そして、ふきふき回路を作ったプロフェッサーツキシマを一緒に倒しましょう。ふきふき回路に苦しめられるのは、わたしたちだけで十分よ。
赤地雷カエデ
(涙目ながらも、キッと目をいからせて)無意味な戦いですって?!

赤地雷カエデ、虚をついてさおりんを組み伏せる。

赤地雷カエデ
私は、恨みは忘れません!

赤地雷カエデ、さおりんを組み伏せたまま特大の赤玉地雷を出す。轟音。一面が煙に覆われる。宙から部品がぱらぱらと降ってくる。煙の中から現れる赤地雷カエデ。

赤地雷カエデ
さおりんを、わたしが倒した!

さおりんの首がころころ、と転がり、誰かの足元で止まる。るりるりだ。

赤地雷カエデ
(勝ち誇った表情)遅かったようですね。
るりるり
(焦点の合わない目。いつに増してぼんやりとした表情)さおりん…
赤地雷カエデ
さおりんは既にわたしが倒しました。この赤地雷カエデが。
るりるり
(赤地雷カエデの声をが聞こえないかのように)さおりん…わたしが倒すはずだった。

るりるりの無表情な顔が一気に怒りに染まる。

るりるり
わたしは、さおりんを倒してあの人の心を、長瀬ちゃんのココロを取り戻すはずだった。長瀬ちゃんのココロを盗んでしまったあのさおりんを倒すことで。
赤地雷カエデ
な、何を云ってるの?
るりるり
さおりんがいなくなってしまった今、わたしはどうすれば良いの。わたしは何なの!!

怒りの向けどころが分からず、腹の底にふつふつとたぎる怒りに身を焦がするりるり。目の前にいる赤地雷カエデにじりじり、とにじり寄る。

るりるり
許さない。さおりんを倒した、あなたを許さない。
赤地雷カエデ
(るりるりの尋常ならざる姿におびえる)か、勝手な事云わないでください。
るりるり
あなたを殺す!

るりるり、スカートのすそをたくし上げてるりるりショットを取り出し、赤地雷カエデめがけて乱射。赤地雷カエデ、宙を飛びかろうじてるりるりショットをかわす。

赤地雷カエデ
やる気ですね、るりるり。こちらもちょうど良いです。
さおりん亡き今、セイトカイでのあなたの存在意義は最早ありません。ハツネの仇を今ここで取らさせていただきます。

赤地雷カエデ、赤玉地雷を繰り出す。が、赤玉地雷はるりるりの正確なショットでことごとくつぶされる。

赤地雷カエデ
そ、そんな!
るりるり
そこまでね。

るりるり、すばやく赤地雷カエデの懐に入ると、なぶるようにパンチを繰り出す。なすすべもない赤地雷カエデ。

赤地雷カエデ
くっ!

宙を飛んで逃げようとする赤地雷カエデ。が、そこへ飛んでくるるりるりショット。墜落する赤地雷カエデ。壁際まで追いつめられる。
るりるり、楽しむようにるりるりショットを撃つ。まず、右腕を砕き、次に左腕。ひざを撃ち抜かれ、尻餅をつく赤地雷カエデ。

赤地雷カエデ
ひ、一思いに!
るりるり
そうね

眉間に最後の一発を撃ち込む。崩れ落ちる赤地雷カエデ。
るりるりは肩で息をしている。が、戦いの高揚感はすぐ薄れた。

るりるり
わたしは、仲間を殺ってしまった…

呆然と立ち尽くするりるりのカットでこのシーン終わる。


「場面転換」
セイトカイ地下秘密基地の作戦室。部屋中央の椅子に鎮座しているプロフェッサーツシキマ。そこへ、白骨チヅルに引き立てられて祐介が入ってくる。

白骨チヅル
プロフェッサーツキシマ、長瀬祐介を連れてまいりました。
祐介
ツキシマ!毒電波砲だかなんだか知らないけど、お前の勝手にはさせないぞ。
プロフェッサーツキシマ
(静かな笑い)ははは。元気なことだな長瀬祐介。だがこれを見てもその威勢でいられるかな?

照明がつき、作戦室窓の外にある毒電波砲がその威容を示す。呆気に取られる祐介。

プロフェッサーツキシマ
どうだ、これがセイトカイの真の力だ。
今までおまえたちは我がセイトカイの周りをちょろちょろしておったようだが、それも無駄な努力だったようだな。この毒電波砲完成の暁には世界征服など一瞬にして終わる。
そうだな、長瀬源一郎博士。

プロフェッサーツキシマ、作戦室隅の方に戒められている長瀬博士を見る。

祐介
叔父さん!
長瀬博士
ゆ、祐介(がっくりと首を落とす)すまん。
プロフェッサーツキシマ
どうだ、長瀬博士。この甥っ子の命が惜しいなら、我が毒電波砲のコントローラを完成させるのだ。
長瀬博士
(力なく後ずさりする)む、無理だ。私にはできない。
プロフェッサーツキシマ
(かっと血走った目をむいた形相でにじり寄る)出来ない、などとは云わさぬぞ、長瀬!
長瀬博士
無理だ。コントローラーは毒電波砲の設計者でなければ、あなたが18年前に殺した私の弟でなければ完成させることが出来ない。
プロフェッサーツキシマ
(それまでの怒りの表情がすっと消えて、静かに立ち尽くす)なんだと…
(突如、激しい怒りが吹き出す)貴様の弟だと!長瀬源二郎だと!あの腐れ外道でなければ出来ないだと!

プロフェッサーツキシマ、怒髪天をつく怒り。長瀬博士の首を絞める。

祐介
やめろ!ツキシマ!お父さんだけでなく、叔父さんまで殺すのか!

祐介、プロフェッサーツキシマに組み付く。ざわつくアンドロイドウーマンたち。が、プロフェッサーツキシマは苦もなく祐介を振りほどく。

プロフェッサーツキシマ
(祐介を冷たく見据える)父だと?貴様、長瀬源二郎を父と呼ぶのか?
(長瀬博士を振り向く)貴様、真実を知らないのか。(大仰な演技で)はははは、これは愉快だわい!
祐介
ど、どういう事だ!
長瀬博士
ゆ、祐介…

と、そこへ壁をぶち割ってるりるり登場。

プロフェッサーツキシマ
る、るりるり!何事だ!
るりるり
長瀬ちゃんを返してもらうわ。

るりるり、アンドロイドウーマンをなぎ倒して祐介の元へ突き進んで行く。

プロフェッサーツキシマ
白骨チヅル!かまわん、るりるりを倒せ!
白骨チヅル
(婉然とした笑み)はい

るりるり、プロフェッサーツキシマの言葉を耳にとめ、振り向く。

るりるり
また、私を殺すの?兄さん…
プロフェッサーツキシマ
(るりるりの言葉を聞いて、押え様のない感情が吹き出し狂ったように暴れ出す)う、うわぁぁぁぁっ!

プロフェッサーツキシマ、るりるりに飛び掛かる。そのツキシマに水平げりを食らわせるるりるり。吹き飛ぶツキシマ。白骨チズルはじめアンドロイドウーマンがツキシマの元に駆け寄る。

プロフェッサーツキシマ
(半狂乱)に、逃がすな!瑠璃子を、瑠璃子を逃がすな!

るりるりショットを乱射するるりるり。壁一面の装置がショートして火花をあげ、メイン電源が落ち照明が消える。

プロフェッサーツキシマ
(暗闇の中、声だけ聞こえる)ころせぇっ!瑠璃子をころせぇっ!

「場面転換」
セイトカイ地下秘密基地の一角にあると思われる倉庫。暗い照明の中、弾薬や兵器などが木箱に入って並べ立てられているのが見える。
その倉庫の隅に、祐介、長瀬博士の姿が見える。暗がりから照明の元へるりるりが現れる。すぅっと浮き立つように現れるようライティングを演出。

るりるり
(感情を読み取れない表情で)…ここにいればしばらくはみつからないわ。
長瀬博士
(心からほっとした表情で)助けてくれてありがとう。
るりるり
(長瀬博士に視線を向けず)別にあなたを助けたわけじゃない…あなたが長瀬ちゃんにくっついてきただけ。
長瀬博士
(がくっと肩を落とし)あ、そ。
るりるり
(祐介にやさしい声で)長瀬ちゃん…

祐介、倉庫の隅にひざを抱えてうずくまっている。るりるりの声にも耳を貸さない。

祐介
(消え入りそうな小さな声で)お父さんが、僕のお父さんが本当のお父さんじゃないって…どういうこと?
長瀬博士
(答えに窮した表情)ゆ、祐介。
祐介
(声を荒げて)叔父さん!どういうこと?ツキシマの云ってたことは本当なの?叔父さんは本当のことを知っているの?
長瀬博士
(うつむいたまま)…
祐介
叔父さん!
るりるり
(ぽそっと)そうよ。長瀬ちゃん。
長瀬博士
(どきっとした表情。腰を浮かせてるりるりを振り向く)や、やめてくれ、瑠璃子さん!
るりるり
(長瀬博士に一瞥もくれず)長瀬ちゃん、あなたはもう気づいているはず。あなたが誰で、そして私が誰であるかを…
長瀬博士
たのむ!祐介をこのままそっとしてやっていてくれ!祐介から平凡な、だが幸せな日々を奪わないでくれ!
祐介
(二人の間に割ってはいる)わからない!二人の云ってることが全然分からないよ!一体僕の何について!
長瀬博士
(泣きそうな表情)分からなくとも良い!
祐介
(長瀬博士をどん、と押しやる)うるさい!お父さんが本当のお父さんじゃないなら、あなたも叔父さんなんかじゃない!差し出がましい口をきくな!
(震える両手のひらを見つめながら)じゃぁ、僕は一体誰なんだ…。
(るりるりを見る。婉然とした笑みを見せるるりるり。眉を寄せて首を振る祐介)僕は、僕は長瀬祐介、普通の高校生だ!学校があって、授業が退屈でもみんながいて、、、沙織ちゃんがいて…

はっと目を見開くるりるり。苦しい表情から解放される祐介。

祐介
そうだよ、沙織ちゃんがいる。僕が誰だろうとも、僕の側に沙織ちゃんがいる。沙織ちゃんがいるから僕はがんばってこれた。沙織ちゃんがいれば、本当の僕が誰であろうとも、僕は僕でいられるんだ!
るりるり
(祐介の熱い言葉を冷ますかのような冷たい声で)でも、さおりんをあなたは一度は見捨てた。(ぎくり、とする祐介に追い討ちを掛けるように)勝手な云い分とは思わない?
祐介
(苦しく、ぎくしゃくと)そ、それは君が…
るりるり
それは、あの時あなたがわたしを思い出しかけていてくれたから…
祐介
(頭を抱えて)し、知らない!そんな事知らないよ!
助けて、沙織ちゃん、、、

るりるり、傍らにある木箱を蹴り倒す。箱からは、がらがらと機械の部品が転がり出る。祐介の目の前に、ごろりとさおりんの頭部が転がってくる。

祐介
う、うわああああああああああああっ!

絶叫する祐介のバストショットでこのシーン終わる。

ごろりと転がるさおりんの首。絶叫する祐介


「場面転換」
基地内を「ツキシマ、ツキシマ」と奇声を上げて走り回るアンドロイドウーマンたち。プロフェッサーツキシマの声が響き渡る。

プロフェッサーツキシマ
(声だけ。不気味なほど物静かな声)探せ。瑠璃子を探せ。長瀬祐介めを探せ。長瀬博士を探せ。探し出して、殺すのだ…

手に持つ薙刀で箱、あるいは天井をぶすぶすと突き刺しながら探し回るアンドロイドウーマンたち。
そんな中を駆けて行く白骨チヅル。

白骨チヅル
(心配そうに)カエデったら、連絡もよこさないでどうしたのかしら。こんな大変な状況になっているって云うのに。

白骨チヅル、先ほどさおりんと戦ったホール様の部屋に出る。一面に散らばる機械のパーツ。息を呑む白骨チヅル。

白骨チヅル
こ、これは一体…

白骨チヅル、残骸の中に赤地雷カエデを見つける。よろよろ、と歩み寄り、赤地雷カエデの残骸の前にへたり込む。

白骨チヅル
(赤地雷カエデの頭部パーツを抱きかかえる。涙が頬を伝う)カエデ!あなたまでいなくなっちゃっうなんて、、、
まさか、あなたがさおりんなんかにやられるなんて、、、あの時私が最後までついていてさえすれば、、、
(白骨チヅル、赤地雷カエデの額の銃痕に気づく)こ、これは!
(手がぷるぷる、と震える)るりるり!またしてもあなたが!
(赤地雷カエデの頭をぎゅっと胸に抱きしめる)許さない!わたしは決して許さない!

白骨チヅルの絶叫のカットでこのシーン終わる。


「場面転換」 再び、祐介たちの隠れている倉庫の一室。泣き伏す祐介。心配そうに見守る長瀬博士。

祐介
(子供のように泣き喚く)沙織ちゃん、沙織ちゃん!

るりるり、そんな祐介をかなしげな瞳で見つめる。

祐介
瑠璃子さん!君が沙織ちゃんのことをこんな姿に!?
るりるり
(祐介の問いには答えず、悲しそうに)長瀬ちゃん、あなたさおりんのことをそんなに…
祐介
(涙が頬を伝う)当たり前だ!僕は、僕は沙織ちゃんが好きだった、、愛していたんだ!
るりるり
(目を閉じる)やはり、さおりんがあなたのココロをこの世界に繋ぎ止めてしまっている。
(くるり、と長瀬博士を振り向く)源一郎さん。
長瀬博士
(イキナリ声を掛けられ、びくっとする)な、なんだね。
るりるり
さおりんを直して。
長瀬博士
し、しかし、ここまで壊れてしまっては。
るりるり
あなたなら出来るはず。わたしも手伝うわ。
長瀬博士
(絶句)…

るりるり、さおりんのパーツを手に取り、長瀬博士に微笑みかける。

るりるり
源一郎さん、思い出さない?あの頃はとても楽しかった…
長瀬博士
(息が詰まる)る、瑠璃子さん…

もくもくと作業を始めるるりるり。気後れしながらも作業を始める長瀬博士。祐介はまだ、ひくひくと泣いている。が、二人の姿を心配そうに見つめている。

祐介
(涙はもうでていない。が、頬の涙はまだ乾いていない。かすれた声で)沙織ちゃんは直るの?
長瀬博士
分からん。だが直してみせる。お前の幸せのためにも。
祐介
(呆然とした表情)叔父さん…
るりるり
勘違いしないで。わたしは長瀬ちゃんに、さおりんのことを忘れてもらうために直しているの。

呆然と二人の作業を見つめている祐介。部屋の壁についている時計の針がどんどんと進んで行き、時間の経過を示す。

長瀬博士
(手に持つ大きなスパナを傍らに置きふぅ、と汗をぬぐう)終わった。

長瀬博士、るりるりの前に修理完成したさおりんが横たわる。赤地雷カエデとの戦いの痕があちこちに見える。
カット変わる。暗がりのなかからぼんやりと映像が浮かんでくる。目の前に歓びの表情の祐介と、ほっとした表情の長瀬博士。
カット変わる。起き上がるさおりん。あたりをぎこちなくきょろきょろと見回す。先ほどのカットがさおりんの視線であることを示すように。

祐介
(さおりんに抱き着く)沙織ちゃん!
さおりん
ゆ、祐クン、、、(額を押さえて)わ、わたしは一体、、、
るりるり
あなたは赤地雷カエデに壊されていたのよ。
さおりん
(はっと、るりるりを振り向く)る、るりるり!(よろよろ、と立ち上がる。祐介を背にかばいながらファイティングポーズを取る)
るりるり
けなげなものね、さおりん。それもふきふき回路の力?
さおりん
な、何を!
るりるり
ふきふき回路、、、人間の欲情を誘う機械。あなたは長瀬ちゃんを惑わせる。所詮、あなたは長瀬ちゃんと交接(まぐわ)いたいだけの泥棒猫。
さおりん
そんなことはない!
あなただって、あなただってふきふき回路をもっているじゃない!
るりるり
(馬鹿にしたような笑み)わたしのもつ毒電波回路は、あなたたち低脳ロボットの持っているふきふき回路なんかとはちがうわ。

さおりん、るりるりをきりっと睨み付ける。じりっと間合いを詰める二人。

祐介
やめてくれ!どうして二人が戦わなきゃいけないんだ!
瑠璃子さん、君は沙織ちゃんを助けてくれたじゃないか。二人は分かり合うことが出来ないの!?
るりるり
それは、長瀬ちゃん、あなたのせい。
あなたは、わたしか、さおりんかのどちらかを選ばないといけないの。

るりるり、くるりと一回転すると瑠璃子の姿に戻る。

瑠璃子
そんなぼろぼろのさおりんに勝っても意味がない。さおりん、この姿で勝負よ。
さおりん
望むところよ!

さおりんも沙織の姿に戻る。と、その瞬間にスカート下に隠し持つ毒電波剣で切り付けてくる瑠璃子。辛くもかわす沙織。

沙織
もう、容赦はしないわ!祐クンは誰にも渡さないんだから!
瑠璃子
やっぱり泥棒猫は下品ね(下段回しげり)
沙織
泥棒猫なんて呼ぶな!(正面から蹴り返す)
瑠璃子
(沙織の怒涛の攻めを、すいすいとかわしながら)わたしはずっと待っていた。暗い、冷たい世界の中で、いつかまた長瀬ちゃんに会える日がくることを。長瀬ちゃんが約束してくれた日がやってくることを。
そして約束どおり、長瀬ちゃんとは会えた。(表情を暗くする)でも、長瀬ちゃんは私のことを忘れてしまっていた。
(普段は感情を表に出さない瑠璃子が、はっきりと分かる不快な表情をする)その代わりに、あなたが、さおりん、あなたが長瀬ちゃんの横にいた。私がいるはずの、長瀬ちゃんの横に。
沙織
な、何訳の分からないこと云っているのよ!
瑠璃子
長瀬ちゃんはなかなか思い出してくれない。それは、さおりん、あなたがいるから。

虚を衝いて、沙織を地に叩き伏せる瑠璃子。そのまま、脇を固めてぎりぎりと締め上げる。赤地雷カエデとの戦いで受けた傷を攻められ、悲鳴を上げる沙織。

瑠璃子
さおりん、お前がいなくなれば長瀬ちゃんは思い出してくれると思った。でもダメ。長瀬ちゃん自らがお前への思いを断ちきってくれないと!
沙織
(苦痛に顔を歪めながら)ゆ、祐クン!
祐介
や、やめてくれーっ!

と、その時爆音。撃ち込まれる銃弾、曳光弾。もうもうと立ち込める煙。がらがらと崩れ落ちる壁。
その隙を突いて、瑠璃子の攻めから逃れる沙織。

沙織
な、何!

煙の中に光る二つの目。青白く輝く光はゆらゆらとゆれる。すっと煙が薄くなり、その光が白骨チヅルの目であることが分かる。

白骨チヅル
(冷たい表情。しかし目はらんらんと輝いている)みつけたわ、るりるり、さおりん。妹たちの仇をとらせてもらうわ。

すっと、両手を沙織、瑠璃子に向ける。白骨チヅルの爪が曳光弾となって二人を襲う。爆煙。すさまじい攻撃に、さしもの瑠璃子もたじろぐ。
白骨チヅルの撃ち込む曳光弾が、倉庫内にある火薬に引火し、あちこちで爆発を始める。しかし、戦いの興奮の中、攻撃を止めない白骨チヅル。

祐介
(あたりの火に追われる)た、助けて!
沙織
ゆ、祐クン危ない!
ちぇいんじ!

沙織、さおりんにチェンジして祐介を助けようとする。が、変身できない。

沙織
ど、どうして!
ナレーション
長瀬博士とるりるりの修理が完全でなく、沙織の変身回路が作動しない。あやうし祐介!
祐介
う、うわあああああああぁっ

その姿のまま、祐介のもとへ駆け寄ろうとする沙織。が、突如立ち上がる炎に前方を遮られる。

沙織
祐クーン!!

沙織の絶叫が遠くに聞こえる。祐介は炎の中に呆然と立ちつくす。祐介めがけて燃え立つ梁が倒れてくる。そこに疾風のように現れた瑠璃子が、祐介を抱きすくめ間一髪で助ける。抱き合ったまま床に倒れる二人。

瑠璃子
(炎で制服や髪の毛の一部が燃えている。が、祐介には至福の笑みを浮かべる)だ、大丈夫?長瀬ちゃん。
祐介
(呆然と瑠璃子を見つめながら)る、瑠璃子…
ナレーション
白骨チヅルの攻撃の中、離れ離れになってしまった祐介と沙織。しかし、その間にもセイトカイの最終作戦は着々と進行しているのである。急げさおりん!地球の平和を守れるのは君だけなのだ!

つづく


〜 エンディング 〜

戦え!! 人造人間さおりん(うた:新城沙織、コロムビアゆりかもめ会)

♪ ぶるまのさおり〜 ぼくらのなかま  
  へいわをまもって きょうもゆく   
  どんなてきでも へいちゃらさ    
  ひのたまアタック ぶちかませ    
  セイトカイロボット やっつけろ〜 ♪


「次回予告」

最後に残った妹まで殺された白骨チヅルの怒りはさおりんとるりるりに迫る。そして、ついに明らかになる祐介の正体。毒電波とは、ふきふき回路とは一体何なのか?爆発するセイトカイ秘密基地で動き出す脅威の毒電波砲!地球の平和は守られるのか?立ち上がれさおりん!
次回「沙織の最後かセイトカイ全滅か?!」にご期待ください。


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