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 賢治おじちゃん・・・
 叔父様・・・
 賢治おじさん・・・

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 父さん・・・

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 どこかで俺を呼んでいるような気がする。
 あたたかい感覚。
 懐かしい感覚。

 ここはどこだ?
 どうして俺はこんなところにいるんだ?
 見渡す一面、濃い霧がかかったような視界。目に付くようなものは何もない。

 いったい何があったんだ?

 何も思い出すことはできなかった。この視界同様、濃い霧がかかったようなはっきりしない思考。次々と湧き上がる疑問が俺の頭の中で警告を発するが、結局、答えを見つけることのないまま霧散していく。だが、決して嫌な気分ではなかった。むしろ、高揚しているといった方が正しいかもしれない。身体が軽く、力がみなぎっているのが分かる。

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 あなた・・・

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 そのとき。
 確かに。
 だれかが。
 俺を。
 呼んだ。

 一瞬たりとも忘れたことはなかった。
 二度と聞けないと思っていた。

 俺ははっとして、声のした方へと顔を向ける。そんなことはありえないという警鐘が、俺の中で鳴らされることはなかった。疑問も、不安も、全ては打ち砕かれた硝子の破片のように四散し、その意味を失っていく。

白いワンピース

 なぜなら。
 なぜなら、それは。

 目の前に、あいつがいたから。
 白いワンピースに身を包んだ、あいつがいたから。

 あぁ、これは夢なんだな。
 白ちゃけた視界の中にたたずむその姿を見ながら、ぼんやりと浮かぶ思考。だが、そんなことはどうでもいいことだった。

 夢でも、幻でも、かまわなかった。
 幽霊でも、死神でも、鬼でも、かまわなかった。

 俺は無意識のうちに、ふらふらとあいつへと歩みを進めていた。いつの間にか自分の目から溢れていたものを拭うことすら忘れ、あいつへと手を伸ばす。その手は情けないほど、ぶるぶると大きく震えていた。

 ずっと、待ち続けていました。
 ずっと、待ち続けていたのでしょう?

 優しい微笑みを浮かべて、俺へと手を伸ばすあいつ。手と手が触れ合い、固く握りしめられる。もう、俺の手が震えることはなかった。そのぬくもりに、俺の全身は歓喜の雄叫びを上げる。まるで、身体中を電気がかけめぐったような感じだった。そのまま、その手を自分の方へぐいっと引き寄せる。かすかな香水の香りと、匂いたつような女性の甘い香りが俺の頭をしびれさせた。

 その瞬間。
 俺の中で。
 何かが。
 はじけた。

  俺はあいつを抱きよせると、半ば強引に唇を奪う。とまどうあいつの唇をこじ開け、舌をねじ込む。ねっとりと二つの舌をからませ、涎液を流し込み、そして吸う。あいつの目が潤み、瞳にかすかな恍惚の輝きが宿る。
 息の続く限り口付けを続けたあと、俺はようやく唇を離した。二人の間につーっと細い銀糸が延び、きらきらと光を放つ。俺はあいつをじっと見つめながら、その華奢な身体を力一杯抱きしめる。あいつはなにも言わず、俺に身を預けている。白い薄布の下に感じられる柔らかな肌が、とても心地よかった。

 あいつをこの手に感じることのできる喜び。
 自分の心のままに身体を動かすことのできる喜び。

   ワンピースの上からあいつの胸の感触を確かめる。頬を朱く染めたあいつが恥ずかしそうに目を伏せる。慎ましげな二つの膨らみは、俺の手にすっぽりおさまるくらいの大きさで、どこか初々しさを感じさせるものだった。たまらず俺は、あいつの胸を荒々しく揉みしだき始める。あいつの口から熱い吐息がこぼれ、俺の胸板をくすぐった。

 もう二度と、離さぬように。
 もう二度と、そのぬくもりを失わぬように。

 邪魔なワンピースを脱がせる手間すら惜しんで、そのまま剥ぎ取ってしまう。俺の手がほんの少し力を込めて引き裂くだけで、ひらひらと雪のように舞い落ちる布片。勢いあまって、そのままブラジャーを引きちぎり、ワンピースを原形をとどめないほどに破り散らす。さっきまで薄布に隠されていた慎ましげな二つの膨らみの頂点には、固くなりかけた小さな桜色の突起があった。俺は胸への愛撫を続けながら、片方のかわいらしい突起を唇で挟んで、その先端に舌を這わせる。

 ずっと、寂しかったんです。
 ずっと、寂しかったのでしょう?

 与えられる刺激から逃れるように、ビクンと背をのけぞらすあいつ。次第にあいつの呼吸が乱れ、肌が上気していくのが分かった。俺は手のひらで撫でるようにしながら、胸から腰へと右手を下降させていく。最後に残された彼女の砦は、かろうじてその腰を覆っている小さな白い布切れだけだった。
 俺の手はたやすく砦に進入し、王女の寝室へと進んでいく。本来、固く閉ざされているべき寝室の扉は、今、開け放たれようとしていた。

 たとえ、遠くに離れていたとしても。
 たとえ、叶えられることのない願いだとしても。

 中指と人差し指をそろえて上下させ、扉をゆっくりとさする。すぐに指には温かいぬめりがまとわりつき、ショーツを、そして内股を濡らしていく。あいつは小さく声を上げると、潤んだ瞳で俺を見つめ、唇を重ねてくる。そうすることで、あいつの口から発せられる言葉が、想いとなって俺の中に流れ込んでくるような気がした。

 愛して・・・います。

 しっとりと汗ばんだあいつの透き通る肌に、艶やかな黒髪がさらさらと流れ落ちる。その姿は、この世のものとは思えない、夢のような美しさだった。まるで汚れを知らぬ少女のようなその白い肢体に、俺の欲望は際限なく膨らんでいく。

 あなた・・・
 おじさま・・・

 ずっとなにかに耐えるようにしていたあいつが、かすかに漏らした声。はっとしたように目を開くと、俺の顔を見つめるあいつ。なにかを言いかけようとしたその唇を、俺は無理矢理自分の唇で塞いだ。一瞬、目が大きく見開かれ、そしてゆっくりと閉じられる。
 切なげな表情を浮かべ、固くつむったあいつの目に、涙がにじんだ。俺はそっと唇を離すと、今にもこぼれ落ちそうな涙の雫に口付けて、それを拭い取る。

 それは、伝え合うことのできなかった想い。
 それは、果たすことのできなかった約束。

 俺は、全てを理解していた。あいつ以外になにも見えなかった視界が、色と形を取り戻してゆく。

 ここは俺の寝室だった。
 そして腕の中には、俺が愛して止まないひとりの女性がいた。

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